ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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例えば、部下がよそよそしい、という場合、自分がどう見えているのか、自己分析できることが重要です。もし、ご自身の特徴が「気難しそう」と分析できれば、相手から、常に「声をかけにくい」というバイアスがかかることが分かり、状況に適応した行動がとれます。気難しそうな人の場合、配慮なく話してしまうと、相手はバイアスを強めて、ますます声をかけにくくなるものです。効果的なのは、相手に誤解を受けそうな傾向を、先に「開示」しておくことです。更に、「よく、話しかけにくいと言われますが、実は、話し好きなので、声をかけてください。」など、関係構築に向けた具体的な行動も示しておくと、相手は、「気難しそう」なバイアスを解除した上で、どのように接すればよいか理解します。また、ご自身を語ると「本音を話してくれた」と感じて親近感を覚え、関係構築の助けとなります。これを、着任当日、職員全員の前での挨拶に組み込めば、早期に効果を得られると考えます。注意すべき点は、自己評価と他者評価の一致です。自分では、例えば「頑固」「優柔不断」と思っていても、周囲との評価が異なる場合、効果がありません。思い込みを避けるため、他者、特に、ご家族や配偶者からフィードバックを得て、自分の捉え方と一致しているか、チェックすると良いでしょう。c.フィードバックの注意点他人からフィードバックを受ける際には注意が必要です。海外論文によると、部下から上司への360度評価は、例外なく、「上下関係」「公平性」「関係性や仲間意識」によって、正しい解釈を阻害され、時に悪化を招くとされています。少しでも効果を上げるために、受け手となる、上司の皆さんへの対策をご提案します。(ア)「日頃から信頼関係を築いておく」。例えば、些細なことに対して「感謝を伝える」、また、相手がご自身からどのような評価・関心を欲しているかに目を向け「積極的な声かけ」や「挨拶」を行うなど、双方の心の壁を低くすることです。(イ)フィードバックを受ける際の質問の表現を、良い悪いではなく「素晴らしい点」「改善して欲しい点」とし、部下には「具体的な行動」を示してもらうことです。特に、改善点は、具体化することで、性格攻撃といった感情的な記載を防ぎ、受け手側もシンプルに受け止められ、行動改善に直結しやすくなります。d.リーダーの素養についてサーバント・リーダーシップと戦力分析の他は、「リーダーとしての自覚」があれば、誰でもリーダーシップ発揮が可能です。内気な人は内気なりに、戦略的に人を動かします。性格は関係ありません。「素養」はリーダーシップ発揮後に、結果論として「あった」と表現することも多いのです。(3)リーダーシップとマネジメントの違いマネジメントは「こなす」。コミュニケーショで言うと「指示」「命令」です。計画に沿って人員や仕事をうまく「分散」させ、演繹的な思考で普遍的な理論を積み重ねる。システムや組織構造のリスクゼロを徹底し、決められたことを確実に実行すること。皆さんの得意ジャンルです。これに対してリーダーシップは「やる気を持たせる」。コミュニケーションで言うと「信頼」「納得」の伝達です。バラバラな状態を一つに「まとめ」、帰納的に、観察やデータ分析結果から結論を導きます。期待を示し、モチベーションを作り、「信頼」を構築することが使命です。これぞ、皆さんに備えていただきたい力です。(4)リーダーシップと「信頼」人は「信頼」があって初めて相手の言葉を受け入れ、「信頼」によって動きます。人を動かすリーダーに不可欠の「信頼」。どのようなプロセスを経て得られるものなのでしょうか。一にも二にも、相手に「信頼」が伝わる、目に「見える」行動をとることが基本です。なぜ、「見える」ことが重要なのでしょうか。それは、相手が判断できるのは「皆さんの発言や行動だけ」だからです。いくら「信頼している」と心の中で念じても、相手に伝わりません。「気持ち」や「意識」は、誰にも見えないからです。一方、相手が「信頼」と解釈できる言動をとれば、皆さんがどのような気持ちであろうと関係なく、相手41 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ セミナー

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