ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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コラム 経済トレンド55大臣官房総合政策課 調査員 檜山 直稔/荻野 修平企業の財務構造の長期推移本稿では、平成元年(1989年)以降の企業のバランスシート(貸借対照表)の長期推移について考察した。収益と内部留保・まず日本企業の売上高及び企業収益(経常利益)を確認してみると、売上高はほぼ横ばいで推移している一方、経常利益は近年増加傾向にあり、2013年度以降過去最高を更新し続けている(図表1)。・コーポレートガバナンス改革等を背景に企業が株主還元を積極化しているなかで、株主への配当金は足下増加トレンドにあるが、企業収益の範囲内となっていることから、企業の内部留保(貸借対照表の利益剰余金)も増加している(図表2、3)。図表1 売上/利益の推移(兆円)030609005001,0001,500899193959799010305070911131517(兆円)売上高(年度)経常利益(右軸)図表2 配当金の推移-10010203040506070899193959799010305070911131517(兆円)配当金社内留保当期純利益(年度)図表3 内部留保額の推移0100200300400500899193959799010305070911131517利益剰余金(兆円)(年度)企業の財務構造の変遷・バランスシートの変遷を確認すると、まず資産側では90年代後半以降やや縮小傾向にあったが、2003年度以降増加傾向にあり、特に現預金や投資有価証券が伸びている。・一方、総資産の拡大に対応する資金調達サイドからみると、高水準の企業収益を背景とした内部留保の増加が資産の増加に大きく寄与していることが分かる。収益の蓄積が進んだことで自己資本比率は改善しており、企業の財務基盤が強化されていることが分かる。・借入残高の推移を詳しく確認してみると、総借入金額は1995年をピークに減少し2000年頃からほぼ横ばい。構成をみると、長期金利の低下等を背景に徐々に負債の長期化が進んでおり、長期借入金の割合が上昇している。また、事業から得られるキャッシュフローの何倍の純借入(総借入金額から現預金額を除いた額)を行っているかを示す指標の一つである純借入金額/EBITDA倍率も、足下ピーク時の1/3程と大きく低下している。図表4 総資産の推移05001,0001,5002,000899193959799010305070911131517その他固定資産投資有価証券有形固定資産その他流動資産現預金(兆円)(年度)図表5 負債/純資産の推移101520253035404505001,0001,5002,000899193959799010305070911131517純資産負債(%)自己資本比率(右軸)(兆円)(年度)図表6 借入残高の推移0.02.04.06.08.00200400600800899193959799010305070911131517短期借入金長期借入金純借入金額/EBITDA倍率(右軸)(兆円)(倍)(年度)(注)有形固定資産=建設仮勘定の増加+その他有形固定資産の増加+減価償却費、投資有価証券=固定資産に計上された株式、公社債、その他の有価証券の合計、EBITDA=営業利益+減価償却費、自己資本比率=(純資産ー新株予約権)/総資産35 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ 経済トレンド

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