ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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・パイロット対象受け入れ国側との協議、システムデザインの決定、調達、その他ロジスティックスの検討を経て、執筆時点でキルギス共和国、タジキスタンに各90ユニットが、アフガニスタン向けに80ユニットが設置され、稼働しています。キルギス共和国、タジキスタンは旧ソ連の一部だった時代にほぼ100%の家庭に送電線が引かれ、電化されている、というのが建前です。他方、旧ソ連時代もなんらかの事情で取り残された地域、旧ソ連崩壊後、送電線網に十分なメンテナンスがなされなかったことから無電化状態に戻ってしまっている地域が、特に山岳地帯(標高4,000m超のパミール高原など)に点在しているのが現実です。今回のパイロットの対象となる家庭もそれらの地域から、受け入れ国政府と調整しながら選ぶこととなりました。アフガニスタンにおいては、資金不足、治安上の問題から送電線網が全国的に十分整備されておらず、数多く無電化地域が存在しているところ、比較的モニタリングが容易なカブール近郊の無電化村がパイロット対象に選ばれました。・パイロット評価項目パイロットにおいては、当該オフグリッドシステムは家庭の需要にマッチしているか(もっと照明器具が必要、冷蔵庫よりは調理器具や洗濯機が必要など)、当該システムが適切に稼動するか・どの程度のメンテナンスコストが必要となるか・電力需要と太陽光パネル、蓄電池のサイズがマッチしているか、等の技術的な側面に加え、当該地域において当該システムが文化的・社会的に受け入れられるか(Social Acceptability)、当該システムの利用に対し、各家庭はどのくらいの金銭的、経済的価値を見出すか、また、各家庭にはどの程度の支払い能力があるか(Willingness to Pay, Ability to Pay)等を評価することになっています。これらの評価等を踏まえ、そもそも当該オフグリッドシステムが無電化地域を電化する上で適切なソリューションなのか、どのような地域においてより有効、又は有効ではないのか、技術的に改善すべき点はないか、どのようなビジネスモデルとすれば持続可能かなどを今後検討し、より大規模なプロジェクトに繋げていけるか、を検討することとなります。(写真2、3:キルギスの山間部では、トラックの通ることのできる道が無いため馬や船を使ってパイロットシステムを運搬した。)(写真4、5、6:タジキスタンのパミール高原の家庭に設置されたパイロットシステム)31 ファイナンス 2019 Jan.連 載 ■ 海外ウォッチャー

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