ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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国際局国際機構課長 緒方 健太郎2018年11月30日~12月1日にかけて、アルゼンチンを議長国として、アルゼンチン・ブエノスアイレスにて、G20首脳会議(サミット)が開催され、日本からは安倍総理大臣、麻生副総理兼財務大臣が出席した。G20サミットは、リーマンショックを契機とした金融危機に対応するための国際的政策協調の枠組みとして2008年11月に初めて開催され、2009年9月のG20サミット以降、「国際経済協力に関する第一のフォーラム」として世界経済における重要な役割を担っている。今回のサミット会合では、公正で持続可能な開発のためのコンセンサスの構築」という主要テーマのもと、貿易関係の緊迫化や新興国経済の脆弱性等の下方リスクに直面する中で、いかにG20の結束を維持し、経済成長を強化していくか等、2日間にわたり、首脳間で率直な意見交換が行われた。本稿では、世界経済、国際金融アーキテクチャ、低所得国における債務問題、及び国際租税の分野における議論の概要を紹介したい。1世界経済について世界経済の成長については、強固である一方、国同士の間で経済成長がますます同時に連動しなくなっていること、また、金融上の脆弱性、及び地政学上の懸念を含む幾つかの主要なリスクが部分的に顕在化したことが認識された。また、現在の貿易上の問題に留意するとの文言も盛り込まれた。その上で、強固で、持続可能で、均衡ある、かつ、包摂的な成長というG20の目的を達成するため、信頼を高める対話と行動を強化することにより、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いることへの決意が引き続き表明された。また、金融政策は、引き続き、中央銀行のマンデートと整合的に経済活動を支え、物価の安定を確保し、財政政策は、必要に応じてバッファーを再構築すべきであり、かつ、公的債務が持続可能な道筋にあることを確保しつつ、機動的に実施し、成長に配慮したものにするべきであるという認識が共有された。為替についても、これまでの為替相場のコミットメントを再確認するとの一文が入った。安倍総理は、世界経済を扱う第1セッション「人間を中心に据える」において、リードスピーカーとして発言を行い、自由で開かれた経済は平和と繁栄の礎であり、日本は自由貿易の旗手として、ルールに基づく多角的貿易体制の強化・改善や、経済連携協定を力強く推進していること、保護主義や貿易制限的措置の応酬はどの国の利益にもならず、WTO改革の議論をG20首脳が後押しすべき旨訴えるとともに、自由で公正な経済ルールの推進のため、鉄鋼の過剰生産能力問題を含め、市場歪曲的な補助金等の支援措置の撤廃について、公平な競争条件を確保すべきとして、経済成長と格差への対処を同時に達成する「成長と分配の好循環」の創出、SDGsの推進、気候変動問題への対応の重要性についても強調し、各国の支持を得るとともに、サG20ブエノスアイレス・サミットの概要について(2018年11月30日~12月1日開催、於アルゼンチン・ブエノスアイレス)参考1) G20ブエノスアイレス・サミットへの参加国・国際機関(ア)G20:G7(日本、カナダ、仏、独、伊、英、米、)、EU、アルゼンチン、豪、ブラジル、中国、インド、インドネシア、韓国、メキシコ、露、サウジアラビア、南アフリカ、トルコ(イ)招待国:スペイン、星(ASEAN議長国)、ルワンダ(AU議長国)、セネガル(NEPAD議長国)、ジャマイカ(CARICOM議長国)、チリ、オランダ(ウ)国際機関:国際連合、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界貿易機関(WTO)、国際労働機関(ILO)、金融安定理事会(FSB)、経済協力開発機構(OECD)、世界保健機関(WHO)、米州開発銀行(IDB)、アンデス開発公社(CAF)23 ファイナンス 2019 Jan.SPOT

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