ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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交換業者の協力を得て申告手続きを簡素化国税庁では、利用者の利便性を高めるため、申告手続きの簡素化に取り組んでいる。平成30年4月から6回にわたり「仮想通貨取引等に係る申告等の環境整備に関する研究会」を開催し、仮想通貨交換業者を所管する金融庁や仮想通貨関連団体の出席・協力も得つつ、申告の簡素化について検討を行った。この議論を踏まえ、図表5のような申告の簡素化が実現した。たとえば、平成29年分の確定申告では、納税者が自ら仮想通貨の取引情報を交換業者から収集しなければならなかった。平成30年分の申告からは、交換業者が「年間取引報告書」を納税者に交付することとなり(P6参照)、年間の取引内容を手軽に正確に把握できるようになった。納税者が望む場合には、交換業者から個々の取引履歴データの提供を受け、データと自動計算アプリ等を利用して、所得計算をすることも可能。また、納税者が年間取引報告書の内容等を基に数値を入力すると、申告に必要な所得金額等が自動計算できる「仮想通貨の計算書」を国税庁のホームページで公開した(P7参照)。このように国税庁では納税者自身による適正な納税義務の履行を後押しする環境整備を図り、周知・広報を行っている。また、平成30年7月のG20で仮想通貨は「脱税などに関する問題を提起する」と指摘されたこともあり、所得の捕捉や課税について、あらゆる機会を通じて、課税上有効な各種資料情報の収集に努め、必要があれば税務調査を実施するなど、適正・公平な課税の実現に努めている。さらに、平成30年12月21日に閣議決定された「平成31年度税制改正の大綱」においては、納税者による自主的な適正申告を担保する観点から、国税当局が事業者等に対して高額・悪質な無申告者等を特定するための情報を照会する仕組みを整備することとされている。今後、このような仕組みも活用しつつ、国税当局が必要な情報を把握し、課税上問題があると認められる場合はその是正を促すなど、仮想通貨取引の適正な申告に向けて積極的に取り組んでいくことが期待される。納税者納税者(2)仮想通貨の所得を自身で計算※100回取引を行った者は自身で100回分を集計※複数の交換業者で取引を行った者は全ての取引を自身で集計●平成29年分の確定申告●平成30年分の確定申告交換業者A交換業者B(1)仮想通貨取引の情報を自身で収集(4)確定申告書を電子又は郵送で提出(1)一部の交換業者は年間取引の明細を提供しているが、●仮想通貨同士を交換した場合●仮想通貨で商品を購入した場合などの記載内容が区々(3)仮想通貨の所得を確定申告書に記載税務署(2)「年間取引報告書」で集計済の年間取引の総額等に基づき「仮想通貨の計算書」を活用して仮想通貨の所得を自動計算※交換業者は顧客の求めに応じて、個々の取引履歴データを提供し、そのデータと自動計算アプリ等を用いて所得計算をすることも可能交換業者A交換業者B(4)確定申告書を電子又は郵送で提出(1)年間取引報告書の交付※記載内容を統一(3)仮想通貨の所得を確定申告書に記載仮想通貨の計算書税務署図表5 申告方法を簡素化 ファイナンス 2019 Jan.6交換業者が年間取引報告書を交付仮想通貨の確定申告手続きを簡素化特集

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