ファイナンス 2019年1月号 Vol.54 No.10
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所得を自動計算できる計算書を提供確定申告の手続きを簡素化仮想通貨は雑所得に区分。他の所得と合算して申告仮想通貨の取引によって利益を得れば、当然、課税の対象になる。しかし、仮想通貨自体が新しいものであることから、どのような課税になるのか、利用者の理解を深める必要があった。そこで国税庁は、平成29年12月に税法の解釈について明らかにした。所得は給与所得、不動産所得など10種類に区分されており、所得によって税金の計算方法が決まっている。仮想通貨はこのうちの雑所得に区分される。雑所得とは「他のいずれにも該当しない所得」で、公的年金の収入や副業で得た原稿料や講演料なども雑所得に区分されている。雑所得は、給与所得など他の所得と合算する総合課税が基本となる。仮に給与所得400万円の会社員が仮想通貨で50万円の利益を得れば、年間の所得は450万円として税金を計算する。一方で会社員などの給与所得者は、給与所得以外の所得が年間20万円以下であれば申告不要であるため、仮想通貨で得た雑所得の場合も年間20万円を超えた場合に、申告が必要になる。1年間の利益を計算し、翌年の2月16日から3月15日までに申告をしなければならない。ここで確定申告が必要なケースを整理すると、以下の3パターンがある。1 仮想通貨を売却した場合2 仮想通貨で商品を購入した場合3 仮想通貨と仮想通貨を交換した場合1は、仮想通貨を売却して、日本円などの法定通貨に交換したケース。この場合には、仮想通貨を売却して得た日本円の金額と仮想通貨を取得した時の価格の差を雑所得とする。2は仮想通貨を買い物代金や飲食代金などの決済に利用したケース。たとえば、100万円の商品代金を5単位の仮想通貨で支払った場合、仮想通貨1単位=20万円で売却したと考え、取得した時の価格との差額を雑所得とする。3は、仮想通貨と仮想通貨を交換したケース。A仮想通貨をB仮想通貨に交換した場合、Bを取得した時の価格とAを取得した時の価格との差額を雑所得とする。平成29年12月にこのような周知を行った結果、平成29年分の確定申告において、仮想通貨による収入であると考えられる申告が大幅に増加した。たとえば、確定申告をした人の中で公的年金以外の雑所得による収入金額が1億円以上ある人のうち、仮想通貨による収入があったと判別できた人は331人に上った。また申告納税額がある人で主な所得が雑所得の人の所得金額及び申告納税額は平成28年分に比べて大幅に増加している。●公的年金等以外の雑所得の収入金額が1億円以上の人数●主な所得が雑所得の人の所得金額等所得金額申告納税額238人平成28年分平成29年分平成28年分平成29年分平成28年分平成29年分549人このうち、仮想通貨による収入があると判別できた人=331人189百億円184百億円6百億円9百億円500億円UP300億円UP図表4 仮想通貨の課税の状況5 ファイナンス 2019 Jan.

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