ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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1千葉県民さえ知らない食材の宝庫 いすみ市写真1 キハ28に日本で乗れるのはいすみ鉄道だけ(写真:いすみ市)いすみ市をご存知ですか。ご存知のあなたは鉄道ファン?または釣り好き?もしくは相当の食通でしょうか?いすみ市は、千葉県九十九里浜の南端にある東京駅から特急で70分、人口4万人弱の里山と里海に恵まれた自然豊かな街です。いすみ鉄道という昭和の香りが残るローカル線が市内を走り、日本でも有数の釣り船が集まる地でもあります。また、宝島社「田舎暮らしの本」により2017年から2年連続で首都圏の住みたい田舎総合1位に選ばれており、都市部からの移住者が増えている東京にも通勤できる田舎です。そんないすみ市が一番自慢できるもの、それは数多の食材です。海を見れば、日本有数のイセエビ水揚げ高を誇る大原漁港。沖合には器械根と呼ばれる広大な岩礁地帯が広がり、夏にはイセエビのみならず特大のサザエやアワビが揚がります。冬には三陸から下ってくる産卵前の肉厚のマダコにヒラメやタイ、サワラなど高級魚と呼ばれる魚が多く水揚げされます。里山には水田が広がり、最近では有機無農薬で栽培されたいすみ米が国内航空会社ファーストクラスで提供されました。梨やブルーベリー、ミカンなどの果物に、菜花やキャベツをはじめとする各種の野菜も収穫されます。特出すべきはチーズです。市内にチーズ工房が6軒あり、これまたファーストクラスで提供されたチーズやフランスで最優秀賞を受賞したチーズもあります。しかし、3年前まで素晴らしい食材の情報は、あまり外に発信されることはありませんでした。なぜなら地域住民には、昔からある当たり前のものばかりであり、真の価値に気付いていなかったのです。2美食の街いすみ ~サンセバスチャン化計画~そんないすみ市の素晴らしい食材を再認識し、自然豊かな美しい景観に加え、東京からのアクセス利便性にも着目し、食文化の育成を通じていすみ市を「美食の街」として確立することで地域創生の柱とする。これが内閣府地域再生計画にも認定された「美食の街いすみ~サンセバスチャン化計画~」の核心です。行政が司令塔となり、これまでほとんど知られていなかった高品質のいすみの食材を通じて、全国の一流料理人、いすみ市の生産者、料理人等を結び、食材情報や料理技術の共有を図り、地域全体の食材レベル、料理レベルの向上により、地域の所得や雇用の増加を図り、更には交流人口も増やし、地域経済循環の拡大を目指すものです。美食の街いすみ~サンセバスチャン化計画~いすみ市副市長早川 卓也いすみ市74 ファイナンス 2018 Dec.連 載 ■ 各地の話題

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