ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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女優では、芹せり明めいか香が「パラドキシカルなエロスの女神」と評されている。著者は、「四畳半襖の裏張り しのび肌」、「マル秘色情めす市場」など日活ロマンポルノの作品を挙げて、「可憐であることがそのままで猥褻になるという不思議なパラドクス。…類たぐい稀まれな気質」と激賞するが、私は世代的に日活ロマンポルノを観たことがないので、そのパラドクスはよくわからない。しかし、渡瀬恒彦の実兄渡哲也の最高傑作(私はそう思っている)「仁義の墓場」の中で、渡が演ずる狂気のやくざ石川力夫に釜ヶ崎のドヤで覚醒剤を教える娼婦役の女優の演技は、強く印象に残っている。私は長くこの娼婦役の女優の名を知りたいと思っていて、数年前にインターネットで検索して芹明香と知ったのであった。著者は、このドヤのシーンは、監督の深作欣二が「マル秘色情めす市場」に捧げたオマージュとしている。本書によれば芹明香は、1954年生まれ。素行不良で高校を2年で退学後、家出して、OL、掃除婦、ホステス、ヌードモデル、ストリッパーなど14回の転職を経て73年映画デビュー、76年にかけて数々の映画に出演する。その後覚醒剤使用容疑で三度逮捕され、一時芸能界から姿を消すが、84年以降脇役として復帰している。著者は、「あまりにも早い時期に、『生涯の一本』に出演してしまったがために、女優であることに耐えられなくなってしまった女優」とも評している。「昭和怪優伝」をゆっくりと楽しみながら読み終えて、まだ3時。胡麻せんべいを齧りながら、だらだらとテレビを観て5時半。そろそろ笑点でも観ながら夕食に取り掛かろう。このところ出張が多かったので少々体重が増加してしまった。出張先だと、ホテルが朝食付きのセット料金のことが多いので、普段は我慢している朝食をたっぷり食べてしまうからだろうか。今晩はサラダ中心にローカロリーな夕食にしよう。ということで、主菜は厚揚げのエスニック風サラダと、鶏肉と野菜の炒め物。汁は、にらと舞茸とかき玉の中華風スープ。いずれもなかなか美味。家族にも、まあまあ好評。楽しい夕餉である。ところが、飯を軽く2膳に抑えようと、サラダの二度目のお代わりをした時であった。一天にわかに搔き曇った。「サラダって言ったって、厚揚げは揚げ物なんだからね。一人で2丁も食べたらデブになるに決まってるでしょっ」。ごもっとも…。「わかっちゃいるけどやめられねえ」と危うく口から出かかったが、何とか抑えた。鉄砲玉の美学は映画の中だけの話。「沈黙は愚者の知恵」というのが、私の生活上のモットーである。〈材料〉 厚揚げ4丁(安物で可。1丁ずつサイコロ状に8等分する)、鶏胸肉挽肉300グラム、パクチー1束(葉の部分はサラダ用にちぎり、洗って水切り。茎はソース用にみじん切り)、レタス2分の1玉(一口大にちぎり、洗って水切り)、ベビーリーフ1袋(洗って水切り)、玉ねぎ中1個(半分はサラダ用に縦に薄くスライスして5分ほど水にさらしてから水切り。残りはソース用にみじん切り)、一味唐辛子大匙1、おろしにんにく小匙1、おろししょうが大匙1、白ワイン100cc、ニョクナム大匙1(なければ醤油大匙2)、スィートチリソース大匙4、ポン酢大匙2、片栗粉大匙1(1)フライパンにサラダ油大匙1をひき、軽く塩胡椒しながら鶏挽肉を中火で炒める。途中で一味唐辛子、にんにく、しょうがを加え、木べらでほぐしながら色が変わるまで炒める。(2)白ワインを注ぎ、煮立ったら火を弱め、ニョクナム、スィートチリソース、ポン酢、パクチーのみじん切りを加え、味見して、必要に応じ砂糖、醤油などで自分好みに味を調える。一旦火を止め、片栗粉を倍量程度の水に溶いて加え、かき混ぜながら強火で短時間加熱して軽くとろみをつけて、ソース完成。(3)フライパンにサラダ油大匙4をひき、厚揚げを白い面を中心にしっかり炒めて、全体に焼き色をつける。仕上がったら、キッチンペーパーを敷いたバットなどにとる。(4)皿に、レタス、ベビーリーフ、スライスした玉ねぎを盛りつけ、上に厚揚げをのせ、さらにパクチーを散らす。(2)のソースをかけて食べる。*厚揚げに代えて、薄く切った鶏胸肉をカラッと揚げてもいいし、チャーシューを使ってもおいしい。厚揚げのエスニック風サラダのレシピ(4人分) ファイナンス 2018 Dec.71新々 私の週末料理日記 その28連 載 ■ 私の週末料理日記

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