ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute1.はじめにみなさんこんにちは。八田でございます。私は市ヶ谷の研修所時代から皆さんの研修に長く携わってきましたが、大学では、平成15年から日本でも始まりました専門職大学院の会計専門職大学院、青山学院大学大学院会計プロフェッション研究科においてずっと「職業倫理」という必修科目を担当してまいりました。この3月に青山学院大学を離れた後、4月からは、専門学校を中心に展開する大原学園が2006年に設立した会計専門職大学院において、同様に、職業倫理を教えています。今日の日本で、ある一定年齢以上の世代に欠けているのは、センシティブな意識、気付きの気持ち、あるいは我々の専門的な立場から申し上げると、職業人としての懐疑心、こういったものをあまり持ち合わせていないのではないかと感じています。つまり「これまでがこうだったから、こうなるでしょ。」「従来は許されたのだから、これで文句あるんですか。」という態度、まさに前例踏襲です。そして、それに対して何らの疑問も持たない、仮に持ったとしても先例重視という形で、先輩がやってきたことを後輩としておかしいとは言えない。こうして同じ道を歩もうとしているわけですが、実は組織の中は変わっていなくとも、取り巻く環境は劇的に変わってきているのです。それどころか、我々一般人の価値観も倫理観も国際感覚も劇的に変わってきているのです。一番変わったのはITの世界です。私が尊敬する弁護士に、久保利英明というとても有名な方がいらっしゃいます。私は久保利さんと研究会等でよくご一緒するのですが、久保利さんは「いま世界では、一人一人がテレビ局を持っているのだよ。」とおっしゃいます。SNSのことです。いつでも好きな時に世の中にメッセージを発することができる。動画も発信できる。したがって、自分以外の人が知ってしまったことは必ず漏れる、社会に発信される、これは昔ならありえないことです。私たちは、考え方、気付き、国際的な動向、こういったものの変化に敏感である必要があるのです。近年、コンビニをはじめ、様々な場所で外国人を見かけます。インバウンドの取り組みも盛んです。日本ではとうの昔に国際化が始まっているのです。ということは「日本人による、日本人だけの規律付けや約束事」ではもはや通用しないのです。こういった変化を踏まえて行動しなければならないのです。本日の私の話のキーワードは「常に懐疑的であれ」です。疑い深く猜疑心を持て、というのとは違います。懐疑的というのは「先入観を持ってことに当たってはならない」「自分の中で大丈夫だな、と自問自答して最後の結論を導き出す」ということです。こういう態度が求められており、これがベースとなって倫理という問題も説明できるのです。本日のテーマは「ガバナンス改革と公務員倫理」というもので、一見すると脈絡のない言葉が並んでいるように見えますが、私は、同じ意味、同じことの見方の違いだと考えており、その方向で話を進めてまいります。平成30年9月25日(火)開催上級管理 セミナー八田 進二 氏(青山学院大学名誉教授/大原大学院大学教授)ガバナンス改革と 公務員倫理演題講師62 ファイナンス 2018 Dec.連 載 ■ セミナー

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