ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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検査ガイドラインによる検査においては、従来の外為法令及び犯収法令(以下「外為法令等」という。)の遵守状況の確認に加え、検査対象者が外為法令等を遵守するために導入したRBAが適切に機能しているか否かについても確認することとなります。また、これまで個別検査毎に検査対象者の内部監査態勢等を検証するために実施していた「内部監査ヒアリング」を廃止し、外国送金を取扱うすべての金融機関を対象として、外国為替業務におけるリスク及び内部管理態勢の状況等を定期的かつ継続的に把握するためにオフサイトでのモニタリング(以下「オフサイト・モニタリング」という。)を導入します(詳細は下記3)。検査項目1では、業務執行レベルだけでなく、組織全体の包括的なリスク管理態勢が国際的に求められていることを踏まえ、外為法令等遵守への対応を経営戦略上の課題として位置づけ、組織全体で外為法令等遵守のための内部管理態勢の整備を推進するよう経営陣の主体的かつ積極的な関与を求めています。検査項目2では、金融機関等における外為法令等の遵守態勢整備、特に外為法第17条に規定する確認義務の履行において、RBAを明示的に取り入れたより効果的な枠組みへの移行が重要であるとの観点から、顧客の属性や取引実績に係る情報を活用したRBAに基づく確認方法を導入しました。この結果、個別取引等において、顧客属性や経常的な取引内容の把握等一定の条件を満たせば、顧客や取引内容のリスクに応じた確認を実施することも可能となりました。その他、資産凍結等経済制裁措置の確実な実施を図るため、検査マニュアルでは記載のなかった相続人への預金払出時に経済制裁対象者リストとの照合及び住所確認を実施すること、また、外為法令が適用される*4) 外国為替検査不備事項指摘等事例集:https://www.mof.go.jp/international_policy/gaitame_kawase/inspection/fubijirei20180706.pdf本邦銀行等の海外支店における経済制裁対象者リストの整備、預金口座の管理や支払等における確認等を本邦内支店と同様に実施することを求めています。検査項目3及び5では、両替業者に対するRBA適用の前提となる特定事業者作成書面等(リスク評価書)の作成及び同書面等を活用する態勢整備に関する努力義務を明確にしました。検査項目3では、(1)同書面等の内容を勘案し、確認記録の継続的な精査、(2)自らが特定及び評価したリスクを前提としたリスク低減措置の実施、検査項目5では、(1)リスク低減措置の検証等の実施及び所要の管理態勢の整備、(2)過去に疑わしい取引の届出を提出した顧客に対する適切なリスク評価及び管理の実施、(3)業務規模に応じたITシステムの活用等による個別取引のモニタリング態勢の整備を努力義務として掲げています。検査項目4及び6では、RBAを適用する余地がない若しくは極めて限定的と考えられることから、検査マニュアルとの大きな相違点はありません。第3章には、検査マニュアルに添付していた(1)特定国関連取引の概念図、(2)犯罪収益移転防止法に関する留意事項、(3)外国通貨又は旅行小切手の売買に係る疑わしい取引の参考事例を、これまでに公表した「外国為替検査不備事項指摘等事例集」*4の内容や取引時確認等を的確に行うにあたっての留意点等を反映して更新の上、参考資料として掲載しました。3オフサイト・モニタリングの導入FATF勧告では、金融機関等特定事業者のみならず、当局に対してもRBAに基づく対応が求められています。こうした状況を踏まえ、財務省では、予防的かつ継続的に検査対象者固有のリスクや問題点を把握することを目的として、外国送金取引を取扱うすべての金融機関に対し外国為替業務におけるリスク及び内部管理態勢等に関するオフサイト・モニタリングを実施します。オフサイト・モニタリングは、原則として1年に1回、外国為替業務の概況や内部管理態勢の状況等に関する調査票を送付し、同調査票の回答から把握した情報に基づき実施します。また、オフサイト・モニタリ【図表】外国為替検査ガイドラインの検査項目項目1:外為法令等遵守のための内部管理態勢全般項目2:資産凍結等経済制裁に関する外為法令の遵守状況項目3:両替業務に係る取引時確認等の犯収法令遵守状況及び本人確認義務等に関する外為法令遵守状況(除く両替業務)項目4:特別国際金融取引勘定に関する外為法令の遵守状況項目5:両替業務に係る疑わしい取引の届出義務の遵守状況項目6:外為取引の通知義務に関する遵守状況38 ファイナンス 2018 Dec.SPOT

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