ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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3世銀・IMF合同開発委員会今回の開発委員会*1においては、世銀グループの人的資本や革新的技術など、開発支援をめぐる様々な政策課題について議論が行われた。日本からは、麻生大臣が閣僚級制限昼食会及び開発委員会本会合に出席し、日本のスタンスについて発言するとともに各国総務と意見交換を行った。日本からは、IBRD増資の総務決議の採択を歓迎し、IFC増資の早期の総務決議採択への期待を述べるとともに、IBRDの卒業政策も含め、増資パッケージで合意された改革の着実な実施を求めた。質の高いインフラ投資については、民間投資の一層の動員という観点だけでなく、インフラの持つ物理的な価値を超えた、自律的な経済成長への貢献という観点から推進すべき課題であるとの考えを強調した。人的資本に関しては、世銀グループのHCP(ヒューマン・キャピタル・プロジェクト)が始動したことを歓迎するとともに、人的資本強化の一環として、UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)の導入とそれを支える持続可能なファイナンス構築の重要性を強調した。また関連して、IDA第19次増資に向けて、UHCの導入や持続可能な保健財政システムの構築など保険分野への重点的な支援を求めた。防災に関しては、東南アジア災害リスク保険ファシリティ(SEADRIF:Southeast Asia Disaster Risk Insurance Facility)について、ラオス・ミャンマー向けの地域災害リスク保険の早期稼働と、他のASEAN+3各国の参加への期待を表明した。債務問題に関しては、債務国と新興債権国を含む公的及び民間の債権者の双方が、債務の透明性・持続可能性確保に向けて協調して行動することの必要性を指摘するとともに、世銀とIMFに対して、債務データの整備や債務管理に関する技術支援強化、持続可能な貸付に関する理解の促進、途上国の債務抑制を促すよう関連ポリシーの見直しなど、着実な成果を得るための更なる取組みを求めた。革新的技術については、技術革新によって「人」・「労働者」が失業することなく、成長の恩恵を享受する「包摂的な成長」を実現することが必要であり、そ*1) 開発をめぐる諸問題について世界銀行・IMFに勧告及び報告を行うことを目的として1974年に設立。以降、春・秋の年2回開催。のためには、技術革新と共存できる人的資本の強化及び、先進技術を吸収し、成長に活かすための経済成長基盤の整備の2点が重要であるとの考えを示した。環境に関しては、地球環境ファシリティ(GEF)第7次増資が過去最大規模で決着したことを歓迎した。4出張者小話3年に一度のワシントンD.C.以外でのIMF・世銀総会ということで、今般の一連の会議はインドネシアのバリにて行われた。バリの文化はインドネシアの風土特有のものと、ヒンドゥー教に根差したものが混ざり合い、独特の世界観を生み出している。ヒンドゥー教の修行の1つにヨガがある。曰く、「心身の鍛錬によって肉体を制御し、精神を統一して人生究極の目的である「解脱」に至ろうとする伝統的宗教的行法のひとつ」であるらしい。なるほど、気温は30度前後、ホテルから少し歩けば海と砂浜が広がる場所で、スーツにネクタイを身に着け、強烈な日差しの中で行われる国際会議は、バリという土地のある種の体験活動なのかもしれない。会議が行われた地区の道路は片側一車線しかない。会議場の近くに設置された降車場も、退避スペースが用意されているわけではなく、人が乗り降りすれば車の流れは必然的に止まる。各国の大臣・総裁の乗る車も同じ流れの中を走るので、全体的に到着時刻は遅延気味だった印象を受けた。それもそう、バリはアジアでも有数のリゾート地、時間は緩く流れるべき場所なのだ。G20財務大臣・中央銀行総裁会議では、50人を超える財務大臣・中央銀行総裁級が一堂に会するため、1つのセッションで発言できるのは一人3分程度に過ぎない。3分を経過すると鳴り響くアラームの音を度々聞きながら、会議場の外と内での時間の流れのあまりの違いに戸惑いを覚えた出張であった。 ファイナンス 2018 Dec.31世銀・IMF年次総会およびG20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要 SPOT

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