ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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国際局国際機構課長 緒方 健太郎/国際局開発機関課長 今村 英章2018年10月11日~14日にかけて、インドネシア・バリにて、G20財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G20」)、国際通貨金融委員会(IMFC)、世銀・IMF合同開発委員会(DC)等の国際会議が開催された。これらの会合は、年に一度行われる世銀・IMF年次総会に合わせて行われるものである。以下、本稿では、これら一連の会議における議論の概要を紹介したい。1G20(2018年10月11日-12日)今回のG20では、世界経済、国際金融アーキテクチャ、インフラ投資、アフリカとのコンパクト(Compact with Africa)、GPFI(金融包括のためのグローバル・パートナシップ)のテーマについて議論が行われた。世界経済のリスクへの対応のセッションでは、麻生大臣より、9月28日にインドネシアのスラウェシ島で発生した地震及び津波に触れた上で、災害リスクの重要性は経済リスクでもあり、財務大臣・中央銀行総裁にとって災害リスクに対する強靱性を高める政策努力を続けることは重要な責務であること、災害リスクに対する強靱性はG20でも取り上げる価値があること、を述べた。次に、新興国経済のリスクについて、国際的な金融環境の引き締めが見込まれる中、新興国経済における資本流出圧力の高まりについて注意が必要であること、リスクの一部は現実化しており、限られた政策余地も踏まえれば、我々は警戒を怠るべきではない旨、発言した。併せて、アルゼンチンの強化されたマクロ経済プログラムへの支持と、この改革の成功が新興国経済及び世界経済にもたらす良い波及効果を期待していることを述べた。また、サプライチェーンがグローバル化している中、貿易をめぐる緊張の高まりが継続し、世界全体に大きな影響が及ぶことを懸念していること、保護主義的な措置による内向きの政策はどの国の利益にもならず、二国間の枠組みではなく、多国間の枠組みで解決策を追求していく必要があること、を述べた。さらに、グローバル・インバランスについて、過度なグローバル・インバランスは世界経済にとってのリスクであること、二国間の貿易収支の問題ではなく、各国が持続可能な貯蓄投資バランスを実現するために、適切なマクロ経済、または構造政策というものを実施することでその解消を図っていくことが必要であるということを述べ、来年以降もG20において議論を継続していく旨、発言した。国際金融アーキテクチャのセッションでは、国際金融アーキテクチャの強靱性の向上に向け、麻生大臣から様々なご発言があったが、中でも低所得国の債務問題について、G20としては引き続き最優先で取り組むべき課題であり、債務透明性の向上、持続可能性の確保のためには、債務国と債務者、また官民債権者双方による取組が必要であると述べた。インフラ投資のセッションでは、麻生大臣より、アルゼンチンの議長のもとで取りまとめられている「インフラを投資対象とするためのロードマップ」において、「プロジェクト組成」を中心に大きな進展が見られたことを歓迎しつつ、ロードマップの主眼である民間資金動員のため、持続可能な経済発展を支えるインフラ投資の質の高さが重要であり、質か量かという二者対立するような話ではなく、質と量の両方を追求する必要があるということ、を述べた。また、こうした観点からロードマップに残された課題の1つである質の高いインフラ投資について、次期議長国である日本としてもプライオリティーとして推進したいと考えて世銀・IMF年次総会および G20財務大臣・中央銀行総裁会議等の概要(2018年10月11日~14日開催、於:インドネシア・バリ) ファイナンス 2018 Dec.29SPOT

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