ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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定着してきたと考えられるなか、AEO事業者であることが取引上の条件となっている場合もみられるようになっている。AEO制度は、税関にとってもベネフィットのある制度である。日々相当数の貨物が我が国の国境を出入りしている状況において、税関に輸出入申告される貨物のうち、AEO事業者の貨物をリスクの低い貨物として認識することにより、税関の限られた人的・物的資源をAEO事業者が関与する貨物以外のハイリスク貨物に集中させることで、水際での効果的・効率的な取締を可能としている。AEO事業者は、貨物のセキュリティ管理と法令遵守体制を維持することでAEO制度における役割を果たし、税関は、そのようなAEO事業者に対し迅速かつ簡素な税関手続を提供する。これにより、双方がベネフィットを享受しつつ、国際貿易におけるサプライチェーンの安全確保と円滑化の両立の実現というAEO制度の目的を達成しているものであり、その意味で、税関とAEO事業者は重要なパートナーの関係にある。(注)輸出入申告官署の自由化の詳細は、末尾の「参考2」を参照。3AEO相互承認とは(1)背景AEO相互承認は、国際標準に沿ったAEO制度を導入している国・地域との間で、お互いのAEO制度を相互に承認し、AEO事業者が関与する税関手続について、双方の税関当局が迅速な通関を認めるものである。安全かつ円滑な国際貿易拡大のため、WCOもAEO相互承認を推奨しており、現在、世界で約60の相互承認が実施されている。(2)我が国の取組み我が国は、2008年にニュージーランドとの間で初めてAEO相互承認取決めに署名し、これまで、米国、EU、カナダ、韓国、シンガポール、マレーシア、香港との間で署名・実施している。今回の中国との取決め署名により、AEO相互承認が、我が国では9か国・地域との間で実施されることとなった。現在、台湾、オーストラリア、スイス及びタイとの間で協議を進めているところであり、今後も、相手国・地域と我が国との経済的な結び付き等を考慮しつつ、相互承認の実施に向けた取組みを積極的に推進することとしている。(注) その後、11月30日に台湾との間でAEO相互承認取決めの署名が行われ、我が国とのAEO相互承認相手先は、10か国・地域となった。我が国における輸入通関所要時間(2018年)2.1時間0.1時間0.3時間0.0時間一般海上貨物AEO海上貨物一般航空貨物AEO航空貨物(財務省発表第12回輸入通関手続の所要時間調査結果を基に作成)AEO事業者数の推移171002062332392422382362372402402412384655737379808788919191969820557487971031131181251271321368213147687995119144187205133578877701002003004005006007002006/4/12007/4/12008/4/12009/4/12010/4/12011/4/12012/4/12013/4/12014/4/12015/4/12016/4/12017/4/12018/4/12018/11/1153175342402439469501523549583609663684運送業者(2018年11月1日現在)通関業者倉庫業者輸入者輸出者24 ファイナンス 2018 Dec.SPOT

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