ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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査を待つコンテナが長期間滞留し、物流に多大な影響を及ぼすこととなった。国際物流におけるセキュリティの確保は、一方で円滑な貿易を阻害する要因ともなりかねない。国家の安全を守るため、外国から持ち込まれる貨物のセキュリティを確保しつつ、合法的な輸出入取引については円滑な通関手続を認める、という双方の要請を両立させることが求められた。そこで、米国は、輸入者をはじめとしたサプライチェーンに関わる事業者の協力を得ることにより、サプライチェーンの安全確保と物流の円滑化の双方を実現させるため、C-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)プログラムを立ち上げた。具体的には、自主的にサプライチェーンの安全確保に取り組む事業者に対し、税関は、その事業者の貨物に係る検査率の軽減及び迅速な通関処理を認めることとしたのである。(2)WCOが推進米国における同時多発テロ以降も世界各地で続くテロを背景に、ベルギーに本部を置く税関の国際機関である世界税関機構(WCO:World Customs Organization)は、米国におけるC-TPATに係る取組み等を参考に、国際貿易におけるサプライチェーンの安全確保と円滑化の両立を実現するためのガイドライン作成を開始し、2005年、AEO制度の導入・構築に係る国際標準となる「SAFE基準の枠組み」を作成し、これを採択した。各国の税関当局は、このガイドラインに沿ってAEO制度の導入を進めており、2018年7月現在、77の国・地域においてAEO制度が実施されている。(3)2006年に我が国も導入我が国においてもこうした国際的な流れを踏まえ、個々の輸出入「貨物」のリスクに着目して水際で取締を行う手法だけでなく、自らサプライチェーンにおける貨物のセキュリティ管理と法令遵守体制を整備した事業者を税関が「AEO事業者」として承認・認定し、「事業者の資質」を最も重要な要素としてリスク管理を行う手法を採用するとともに、これらの者に対して税関手続の迅速化・簡素化を提供する制度を構築することとした。2006年、まず輸出者を対象にAEO制度を導入した後、輸入者、倉庫業者、通関業者、運送者、製造者と順次拡大し、現在は、貨物の製造から船積みまでのサプライチェーンを構成する全ての事業種についてAEO制度を実施している。2018年11月1日現在、我が国のAEO事業者は684者となっている。(注)我が国のAEO制度の詳細は、末尾の「参考1」を参照。(4)AEO制度の意義これまで財務省関税局は、AEO事業者に対する利便性向上の観点から、随時AEO制度の改善や新たなベネフィットを導入してきた。直近では、昨年10月、AEO輸出入者、AEO通関業者及びAEO製造者を対象とした輸出入申告官署の自由化を導入した。AEO事業者からは、AEO制度の効果として、迅速かつ簡易な税関手続の利用によるリードタイムの短縮やコスト削減といった直接的な効果に加え、AEOのステータスそのものがビジネスにおいて社会的信用度を示す効果がある、との声も聞かれる。国際的にもAEO制度がWCO(世界税関機構)のAEOガイドラインA 税関が定める要件の遵守B 商業上の記録を管理する適正な体制C 財務の健全性D 税関等との協議、協力及び連絡体制E 職員への教育、研修及び啓蒙F 情報交換、情報へのアクセス、情報の保秘G 貨物のセキュリティH 輸送のセキュリティI 施設のセキュリティJ 人的セキュリティK 貿易相手のセキュリティL 危機管理及び事故からの復旧M 実施体制等の評価、分析及び改善要件○迅速な貨物の引取り○貨物検査の軽減○特定の手数料や料金の軽減等ベネフィット ファイナンス 2018 Dec.23日中AEO相互承認取決めの署名SPOT

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