ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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関税局参事官室(国際交渉担当)課長補佐 田邊 裕美子1はじめに10月26日、中国・北京において、安倍晋三内閣総理大臣と李克強中国国務院総理の立会いのもと、中元哉関税局長と倪岳峰中国海関総署長により、日本と中国との間のAEO(Authorized Economic Operator)相互承認取決めの署名が行われた。中国は、我が国にとって最大の貿易相手国である一方、我が国企業には、中国側の通関手続において様々な困難を指摘する声もあり、中国における通関手続円滑化の効果が見込まれる中国とのAEO相互承認の実現は、以前より我が国企業から強い要望が出されていた。多くの期待のなか、両国税関当局による約6年9か月間の長期にわたる協議を経て、今般、相互承認取決めに合意し、署名に至ったものである。2AEO制度とは(1)米国同時多発テロ事件が背景AEOとは、「Authorized Economic Operator」の略である。すなわち、AEO制度とは、国際貿易におけるセキュリティ確保と円滑化の両立を図るため、貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された貿易関連事業者(Economic Operator)に対して、税関が認定(Authorize)を行い、その事業者が迅速かつ簡素な税関手続を利用することを認めるものである。AEO制度の導入の契機は、2001年に米国で発生した同時多発テロに遡る。事件後、米国は、海上コンテナがテロ関連物資の輸送に利用され、外国から危険物が米国に持ち込まれることを懸念し、直ちに国境警備を強化した。その結果、米国の各港において、税関検日中AEO相互承認取決めの署名~安全かつ円滑な通関の実現に向けて~署名式の模様(2018年10月26日 中国・北京 人民大会堂)22 ファイナンス 2018 Dec.SPOT

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