ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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(図 財政制度等審議会「平成31年度予算の編成等に関する建議」(概要))平成31年度予算の編成等に関する建議(概要)平成30年11月20日財政制度等審議会・平成31年度予算編成は、平成最後の予算編成。平成という時代は、少子高齢化で負担先送りの深刻さが増す中、平成当初に脱却した特例公債に大きく依存していることをはじめ、厳しい財政状況を後世に押し付けてしまう格好となっている(「共有地」の悲劇)。・平成は、税財政運営が受益の拡大と負担の軽減・先送りを求める圧力に抗えなかった時代。受益と負担の乖離は、国民が財政を自らの問題と受け止めることを困難にしたおそれ。・新たな時代では、財政健全化どころか一段と財政を悪化させてしまった過ちを繰り返さないようにする必要。2025年度の国・地方PBの黒字化は背水の陣。「新経済・財政再生計画」の今後3年間(基盤強化期間)の歳出規律を遵守する必要があり、平成31年度予算が新たな時代の幕開けにふさわしい予算となることを期待。・財政健全化に国民の理解を得るには、エビデンスに基づく政策立案を推進すべき。現在の世代の納税者の代理人そして将来世代を負担の先送りによってもたらされる悲劇から守る代理人としての役割を果たすため、当審議会は、発信力の強化などを含め、自らの在り方も改革。総論・今後も一般財源総額実質同水準ルールの下で地方財政の健全化を進めていくことが重要。・地方財政計画には、歳入・歳出の両面で決算との乖離があり、また、計画自体に多額の「枠計上経費」が存在。一般財源総額の増額を主張するのであれば、その前に、計画における歳出の計上が適正かの検証が不可欠。・税収増や上記の乖離に頼った財政運営は適切でなく、地方においても受益と負担の関係の「見える化」を進め、歳出増の大宗を占める社会保障費の抑制に取り組むことが不可欠。都道府県が主体的な役割を果たして、(1)地域医療構想の下での病床再編、(2)国民健康保険における法定外一般会計繰入の解消、業務の効率化・広域化、(3)公立病院の経営改革、基準外繰出しの見直し、等に取り組んでいく必要。・地方法人課税の偏在是正に向けて、本年末までにしっかりと結論を得るべき。2.地方財政平成31年度は、基盤強化期間の初年度。社会保障関係費の伸びを「高齢化による増加分に相当する水準におさめる」という方針の下、手を緩めることなく改革に取り組む必要。国民皆保険を維持しつつ、制度の持続可能性を確保するため、以下の視点に基づいて医療・介護制度改革を行う。また、将来の支え手の減少が見込まれる中、全世代型社会保障の考え方に基づく取組を一層推進。1.制度の持続可能性を踏まえた保険給付範囲としていく・費用対効果や財政影響などの経済性も踏まえた保険収載の在り方など、高度・高額な医療技術や医薬品への対応。・薬剤自己負担の引上げ、介護の軽度者向け生活援助サービスに係る給付の在り方の見直しなどにより、大きなリスクは共助、小さなリスクは自助や地域の支え合いで対応。2.必要な保険給付をできるだけ効率的に提供する・地域医療構想の実現に向けた都道府県によるコントロール機能の強化、医療費・介護費の地域差半減・縮減に向けたインセンティブ策の活用による保険者機能の一層の強化など、医療・介護提供体制の改革。・診療報酬・薬価の適正化、介護報酬改定に係るPDCAサイクルの確立など、公定価格の適正化・包括化。3.高齢化や支え手減少の中で公平な負担としていく・医療保険における後期高齢者の窓口負担の引上げや介護の利用者負担などの改革による年齢ではなく負担能力に応じた負担の在り方の検討。・支え手減少下での医療費増加に対する総合的な対応を検討。1.社会保障・文教・科学技術分野の公的支出の水準は主要先進国と遜色なく、真の課題は予算の「量」ではなく、予算の「使い方」。・定数改善がなくとも、少子化等により児童生徒当たりの教職員数は増加。更なる教職員数の増加は、定量的・客観的なエビデンスやPDCAサイクルの確立が前提。教員の働き方改革の観点から、まずは、教員の業務の見直しが必要。・高等教育については、教育の質のチェックや公表などの大学改革を進めるべき。高等教育の経済的負担軽減の拡充にあたっては、大学改革を阻害しないよう、対象となる学生や大学等に関して、実効性ある要件を定めるとともに、大幅な定員割れ大学等が税負担で救済されることのないよう、こうした大学等を負担軽減の対象外とすることが必要。私学助成については、定員割れ大学等への減額強化、特別補助等の助成対象外化が必要。・科学技術については、研究開発の生産性の低さが真の課題。大学の硬直性や資源のシニア層への偏重を解消し、新陳代謝を促すため、「メリ」の明確化も含む厳しい優先順位付けが必要。特に、国立大学運営費交付金については、原則前年同額で各大学に配分されているが、このうち、10%、1,000億円程度は、厳選された共通のアウトカム指標による相対評価に基づき配分すべき。また、官民の役割分担の適正化、執行の適正化が必要。3.文教・科学技術20 ファイナンス 2018 Dec.SPOT

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