ファイナンス 2018年12月号 Vol.54 No.9
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主計局調査課長 一松 旬財政制度等審議会・財政制度分科会は、2018年9月から7回にわたって審議を行い、「平成31年度予算の編成等に関する建議」をとりまとめ、11月20日に鈴木財務副大臣に手交した。本建議では、平成最後の予算編成である平成31年度予算編成の指針等となるものとして、総論に加え、社会保障、地方財政をはじめとする10の歳出分野における具体的な取組が示されている。詳しい内容は建議本文をご覧いただくこととし、ここでは後掲の建議の概要に沿って、特に財政総論の中でポイントとなる点をご紹介したい。1平成財政の総括まず、平成最後の予算編成に向けて、平成財政の総括が行われている。平成の財政は、消費税の導入の実現とともに始まり、平成2年度(1990年度)予算では、特例公債からの脱却が達成された。しかし、今や、その特例公債の発行額は平成30年度(2018年度)当初予算ベースで27.6兆円にも及ぶ。現在世代のみが受益し、その費用の負担を将来世代へ先送りする深刻さは、少子高齢化によって増している。こうした状況の下、今年度末には平成2年度(1990年度)末の5.3倍に当たる883兆円もの公債残高が積み上がるなど、平成という時代は、厳しい財政状況を後世に押し付けてしまう格好となっている。こうした状況について、建議では、環境問題において、所有権が存在せず、多数の主体がアクセス可能な資源が過剰に利用され枯渇する問題を指す「共有地の悲劇」を引合いに出し、財政にもまた「共有地の悲劇」が当てはまると指摘している。悲劇の主人公は将来の世代であり、現在の世代は将来の世代に責任を負っているとした上で、新たな時代そしてその先の時代の子供達に、平成時代の財政運営をどのように申し開くことができるのであろうか、という問いを投げ掛けている。2受益と負担の乖離建議では、続けて、こうした財政状況に陥った要因として受益と負担の乖離を取り上げている。平成時代の債務残高累増要因の約7割は、社会保障関係費の増加及び税収の減少によるものである。更に地方交付税交付金等における一般会計からの補填部分を含めれば、約8割となる。まず、我が国の社会保障制度は、国民自らが高齢や疾病のリスクを分かち合い支え合うとの考え方の下、受益と負担の対応関係が明確な社会保険方式を基本としている。しかし、現実には公費への依存が増しており、さらに本来税財源により賄われるべき公費の財源について、特例公債を通じて将来世代へ負担が先送られているため、受益と負担の対応関係が断ち切られたまま給付(受益)の増嵩が続いている。建議では、このことが我が国財政悪化の最大の要因であると指摘している。財政制度等審議会 「平成31年度予算の編成等に 関する建議」について(左から、中空麻奈委員、土居丈朗委員、増田寛也会長代理、鈴木馨祐財務副大臣、榊原定征会長、田近栄治委員、冨田俊基委員)18 ファイナンス 2018 Dec.SPOT

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