ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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近の言葉で言うと、ソーシャルベンチャーとかパブリックベンチャーといわれる領域で社会サービスを担う組織として立ち上げた会社です。「あわえ」とは、美波町の方言で、「路地・裏路地」という意味です。あわえは、地域振興をビジネスとして行うことを目的とした会社です。行政・地域住民・あわえも含めた民間組織とが力を合わせてやっていく、それぞれが受益者になれるような仕組み作りが大事であると考えています。「あわえのビジネスモデルは何か」とよく聞かれますが、割とシンプルです。先ほど美波町にはたくさん課題があると申しましたが、美波町という、日本の典型的な田舎町で人口減少社会を克服する「新薬」を開発して全国に売りたいと考えています。おそらく都市集中と過疎化は日本固有の病ではないだろう、と思っておりますので、この「新薬」で日本が人口減少問題を克服できれば、ゆくゆくは海外でも売れるのではないか,と勝手に仮説を立てビジネスを行っています。ウ.「人の流出」「富の流出」「情報格差」あわえは「地域を元気に」をお題目としていますが、そもそもなぜ地域が元気なくなったのか、を考えてみますと、大きく「人の流出」「富の流出」「情報格差」の3つがその原因と考えられます。このうち「情報格差」についてはインターネットの普及によりかなり差がなくなってきたかな、とは思っていますが、「人の流出」は今も続いていますし、地方創生と言いながら、関東圏への人口集中がますます進んでいるのが実態です。あわえとしては、これが原因ならば、それを克服する事業をやらなければいけない、ということで、「地域の担い手を集める」「地域の商いを育てる」「地域の情報や魅力を伝える」ということに取り組んでいます。7.株式会社あわえの取り組みここからは、あわえの個別の事業の紹介となりますが、地方の声あるある、に合わせてご説明いたします。(1)「仕事が無いから若者がいなくなる」これは地方で一番よく聞く言葉ではないかと思います。私も親からそのように言われ続けて育ってきたように思います。これに対応しないといけないということで、雇用者を呼ばないといけない。仕事を持った人、仕事を創ることができる人、地域との掛け算を起こす人、こういう人が必要になるのです。これはきっと工場誘致ではないのだろう、と思っています。地方こそベンチャーマインドを持った起業家を誘致する必要があるのではないか、と思うのです。雇用力という面では工場とか物流拠点とかになってくるかと思うのですが、美波町は徳島県でも最も高い津波が来ると言われており、経営者の立場に立つと、美波町での工場設立はないな、と考えるわけです。また今の時代、工場が来れば本当に雇用がついてくるのかというと、ほとんど人がいない工場というのも見ますので、これからは地方こそこういうベンチャーマインドを持った人を連れてくるべきではないかということで、今あわえでは、徳島県や美波町と一緒に、ベンチャー企業を誘致するという仕事をやっています。あわえでは、企業誘致とともに、古民家を改築したシェアオフィスを運営するなどしており、その結果、続々とベンチャー企業が美波町に集まりつつありまして、徳島県でも最も多い進出数となっています。(2)「仕事はあるのに若者がいない」私は「地方に仕事はあるのだけれど、それをやってくれる若者がいない」というのが真実に近いのではないかと思います。地方には仕事がないのではなく、仕事の担い手がいないのです。そうであれば、会社を誘致するだけではなくて、雇われる側、担い手を誘致していくことが必要であると考えて、我々は人材の育成なども手掛けています。地元の漁師さん農家さんとインターン生54 ファイナンス 2018 Nov.連 載 ■ セミナー

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