ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
51/84

中古マンションを取り巻く環境の変化・2000年代に入り、「ストック重視」への方針転換が打ち出されたことをきっかけに、品質・価格情報公開制度等、既存住宅市場の環境が整備された(図表6)。・また、骨組みだけを残して内部を大幅に改修する「スケルトンリフォーム」に代表されるリノベーション技術の向上により、新築物件と遜色ない物件の提供が可能となっている。中古マンションの価格は新築と比較すると半額程度の価格であり、リノベーション価格を含めても、新築より割安で取得できる(図表7)。・消費者の住宅所有に関する志向において、「新築・中古どちらでもよい」と答えた人の割合が増加していることからも、上記の環境整備、技術向上により消費者マインドが変化しつつあることが窺える(図表8)。図表6 既存住宅をめぐる制度・ 環境の変遷時期内容2006年社会資本としての「ストック重視」を理念として掲げた「住生活基本法」が制定2008年中古住宅の適切な市場形成を目指し、大手住宅メーカー9社は「優良ストック住宅推進協議会」を設立2011年「住生活基本法」に基づいた「住生活基本計画」を立案2012年以降「日本再興戦略」で「中古住宅・リフォーム市場の倍増」を政策目標に掲げ、具体的施策が始動⇒不動産の評価基準の整備や長期優良住宅化のための基準等の整備等を行うことで、居住面の環境整備を促進。図表7 首都圏マンション平均発売価格 推移01,0002,0003,0004,0005,0006,0007,000201011121314151617(万円)(年)中古新築図表8 住宅所有に関する志向の変化02040608010020112017(%)(年度)新築住宅新築・中古どちらでもよい中古住宅その他中古マンション市場の今後の展望・課題・中古マンションを含む既存住宅を選択肢として選ぶ世帯比率は伸びており、今後もその傾向が続き、流通量も増加していくことが予測されている(図表9)。・一方、ストックの内訳をみると、新築マンション供給の水準が低下している中、築年数20年以上の割合は年々増加しており、今後、中古マンション市場においてバブル期以降に建設された老朽化マンションの流通量が急増することが懸念されている。(図表10)。・老朽化マンション増加の裏には、大規模修繕等の合意形成を図ることが難しいといった管理体制における問題もある。このような問題に対応するためにも、適切な維持管理や計画的な修繕を促進する制度の構築や更なるリノベーション技術向上など、長期使用可能な質の高いマンションの整備、普及に向けた取組みがますます推進されることを期待したい。図表9 既存住宅流通量の予測010203040500102030405020051015202530(%)(万戸)既存住宅流通量(左軸)既存住宅を購入する世帯比率(実績値、右軸)既存住宅を購入する世帯比率(予測値、右軸)実績値(推計)予測値(年)(注)野村総合研究所公表値より作成図表10 ストックの築年数別比率0204060801002007年末2012年末2017年末(%)(注)国土交通省公表値より作成築10年以内築10年超~20年築20年超~30年築30年超(出所)国土交通省「住宅着工統計」、「分譲マンションストック戸数」、「建設労働需給調査結果」、「地価公示」、「住生活基本法」、「住生活基本計画(全国計画)」、「土地問題に関する国民の意識調査」、東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向」、「REINS TOPIC」、不動産経済研究所「首都圏マンション市場の動向」、一般社団法人優良ストック住宅推進協議会HP、首相官邸HP「日本再興戦略(2013年)」、総務省「国勢調査」、「人口推計」、「住宅・土地統計調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の世帯数の将来推計(全国推計)」、野村総合研究所HP「2030年の既存住宅流通量は34万戸に増加」(2016年6月7日発表) (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2018 Nov.47コラム 経済トレンド 53連 載 ■ 経済トレンド

元のページ  ../index.html#51

このブックを見る