ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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コラム 経済トレンド53大臣官房総合政策課 調査員 葭中 孝/村田 亮中古マンション市場の動向について本稿では、近年成約戸数が増加している中古マンション市場の現状と先行きについて考察した。マンション市場の現状・2008年のリーマンショックを契機に、分譲マンション着工戸数の水準は低下し、以後現在に至るまで概ね横ばいで推移している。一方、マンションのストックは、建替えなどが容易ではないため、増加の一途を辿っている(図表1)。・ストックの積み上がりに呼応するように中古マンションの成約件数は緩やかに増加しており、首都圏では2016年以降、中古マンション成約戸数が新築マンション契約戸数を上回っている(図表2)。図表1 分譲マンション着工戸数とストックの推移0100200300400500600700800051015202530354019858789919395979920010305070911131517(万戸)(万戸)分譲マンション着工戸数(左軸)マンションストック(右軸)(年)図表2 首都圏マンションの新築・中古別契約(成約)戸数01234567891020010305070911131517(万戸)新築・契約戸数中古・成約戸数(年)(注)新築・契約戸数の2009年以前の数値は公表値より試算新築マンション契約戸数減少の背景・新築マンション着工戸数の水準が低下した一因として、デベロッパーの戦略が「数から質へ」転換したことが指摘されている。業界内の人手不足を受けた建設業の供給制約やマンション建設に適した土地の地価上昇に伴う取得難化がマンション供給の下押し圧力となる中、デベロッパーは利益を維持するために、より利幅の大きい高価格帯の案件に注力するようになったと考えられる(図表3、4)。・首都圏新築マンションの発売戸数を価格帯別で見ると、5,000万円以下の戸数が減少する一方で、5,000万円超の戸数が増加しており、2017年においては全体の5割超を占めている(図表5)。⼀般的なサラリーマンでは取得しにくい水準まで価格が高騰したことが、契約戸数の低下につながっていると指摘されている。図表3 建設技能労働者過不足率▲2▲10123420101112131415161718(%)建設技能労働者過不足率(季節調整値)(年)不足過剰図表4 地価変動率の推移▲6▲4▲2024682006081012141618(%)全国平均東京圏(年)図表5 発売戸数の価格帯別内訳 (2010年・2017年首都圏)010203040506070809010020102017(%)(年)▲15▲10▲505105,000万円以下5,000万円超1億円未満1億円以上(2010年との差、千戸)5,000万円以下5,000万円超1億円未満1億円以上46 ファイナンス 2018 Nov.連 載 ■ 経済トレンド

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