ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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踊りなど各地伝来の7つの祭り・踊りと淡路人形浄瑠璃など15の民族芸能公演や生活文化企画を11日間にわたり地方の魅力を集中的に紹介。まだフランスで十分には知られていない部分も含め、日本の各地方に根ざした、彩り豊かな文化を伝える。パリ日本文化会館にて、いろいろな土地に伝わる、民俗芸能公演、工芸品製作実演やワークショップ、写真パネル等の展示、講演等を通じ、日本の中にいかに彩り豊かな地方文化が育まれているか、それぞれどういう歴史を持ち、どのように育まれた文化なのか、各地はそれらをいかに活用し、守り、継承していこうとしているのかを、楽しく伝える。会期中の週末には、パリ市民憩いの場所、アクリマタシオン庭園で、各地伝来の祭りや踊りを、華やかなパレード形式で、またステージを使って披露。見学に訪れる方々が一緒に踊りに参加することを期待。フランスには和食店もラーメン店も沢山あるが、まだパリでも馴染みの比較的薄い古き良き日本のノスタルジーを感じさせてくれる各地の「B級グルメ」を紹介する屋台や、観光ブースの設置も予定。この他、伝統工芸、いけばな、茶の湯、禅など伝統的な生活文化に加えて、今や競技人口が日本の4倍、約80万人柔道やスポーツ交流も企画。8外交と文化フランスの外交官は、フランスの文化が外交のツールとして有効な武器であることをよく理解しているという。世界中にアンスティチュ・フランセという文化機関を持ち、その幹部は大使館の外交官が兼任。アンスティチュ・フランセは、日本の5都市(東京、横浜、京都、大阪、九州)に拠点があり、2.5万人にフランス語教育を提供し、京都ではアーティスト・イン・レジデンス(芸術家を招聘し、その土地に滞在しながらの作品制作を行わせる事業)も実施。フランス外務省のマセ次官(前駐日大使)によると、「文化外交を起点とする影響力外交は、フランス外交の極めて重要な一要素になりました。国際的な生活は各社会間の相互作用でますます成り立つようになり、多くの分野で国境が消えています。まさにそのために、われわれは言語、文化、魅力、知識など、影響力外交に力を注いでいるのです。われわれがこの変容する世界で道しるべとなるため、われわれの地位を確立するため、われわれの価値観…と同時にわれわれの利益のためです。というのも創造産業や文化産業は、われわれの経済にとって極め重要な切り札であり、平和を前進させるための切り札だからです。われわれは包括的な外交を進めています。経済外交や戦略的外交と、文化外交とが別々に存在しているのではありません。これらは一つの全体を成します。」フランス外交官と直接話したければ、フランス関連の文化行事に行くと会えるかもしれない。例えば、フランスで最初に国葬された画家、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)の常設展を持つ、パナソニック東京汐留ビル内内にある「パナソニック汐留ミュージアム」。前号で御紹介したフランス人美術史家ソフィー・リチャードも「世にあまり知られていないデザイナーや、めったに見られない展示品と出会うにはうってつけの美術館」「日本のデザインは全世界の憧れの的。ところがそれらが見られるところは日本国内にほとんどありません。」と紹介。ここで、フランス関係の展覧会の内覧会に行くと、運が良ければ、駐日フランス大使が来賓として出席し、レセプションで挨拶をされるのでお話ができる。翻って、日本はどうか。六本木のある高名な美術館の館長から聞いたのは、「日本の外交官には、『自分は安全保障ばかりで、文化はやったことがない。』ということを自慢にしている人が多い。」ある外交官からも、「外交官は大使になって初めて文化が外交でも有益だと気付く。それまでは、政治、経済がキャリアの外交官の仕事だと思っている。それではもう遅い。」と聞いたことがある。外交青書2018には、ジャポニスム2018についての言及は見当たらないようだが、ジャポニスム2018の意義などについても、果たして外交官のどれくらいがご存じだろうか。9パリ日本文化会館パリのエッフェル塔の近くにあるパリ日本文化会館。1990年代に日仏間で経済摩擦が厳しかった頃、官民共同でオープンしたこの施設、世界最大の日本文化センターで、大小ホール、展示ホール、図書館、茶室、教室などを備える。初代館長は元NHKニュースキャスターの磯村尚徳氏。オープニングには当時のシ40 ファイナンス 2018 Nov.SPOT

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