ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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年から開催されている文化庁メディア芸術祭が示すように,日本はフランスの何光年も先を行っている。お台場に1万平米の「美術館」を建設し,自らの作品を展示しているチームラボによるデジタルアートの渦を,5月15日からラヴィレットで開催されている展覧会で見ることができる。」と報じる。(3)「若冲―〈動植綵絵〉を中心に」展江戸中期の京都で活躍し、その緻密な描写と色彩で知られる伊藤若冲。2016年の上野の東京都美術館、「生誕三〇〇年記念 若冲展」を見ようとする人で、入館の行列は最大5時間20分待ちを記録。31日間の会期に、44万6,242人が訪れた。文字通り記録的な展覧会となった。その若冲も、60数年前は、ほぼ埋もれていたという。若冲再発見の立役者、米国人の大富豪、ジョー・プライス氏によると、上野の若冲展について、埋もれていた若冲が「見事に復活する様を目にするのは、胸に迫るものがあった。」という。1953年、ニューヨークで建築家フランク・ロイド・ライトについて入った店でプライス氏が最初に購入した「「葡萄図」は墨絵の掛け軸で、西洋人の一般的な価値基準からみると、地味な作品だろう。しかし作者の名も知らぬまま、私は雷に打たれたように見入り、この作品のとりこになった。…若冲をきっかけに広げた円山応挙や酒井抱一(ほういつ)など江戸美術コレクションの総点数は、いまや600を超える。…「『ジャクチュウ』の響きが日本人の耳に根を下ろすのと歩調を合わせるように、無名だった画家は注目を集め、ここ20年ほどで若い人を中心に、人気が高まってきた。」と語る。なお、プライス氏は2006年に国際交流基金賞、2015年に京都府文化賞特別功労賞、2017年に水田三喜夫記念国際賞を受賞。若冲の最高傑作とされる宮内庁三の丸尚蔵館(前号で御紹介したフランス人美術史家ソフィー・リチャードが、驚くほど狭いが出かける価値がある、最高の名品揃いと紹介。)蔵の「動植綵絵」30幅を欧州で初公開。アメリカでは、そのジョー・プライス氏が若冲を含めた日本美術コレクションのための美術館(日本館)をロス・アンゼルスに建てているし、2012年にワシントン・ナショナル・ギャラリーでも「動植綵絵」全30幅が一同に展示されているが、フランスでは、「若冲って、誰?」という状況。増田ジャポニスム事務局長によると「開催までの準備期間と作品の展示期間が短いこともあり美術館との交渉は難航を極めましたが、幸運にも、パリ市立プティ・パレ美術館のルリボー館長が、数年先の予定まで変更して調整してくださり、実現の運びとなりました。」とのこと。現地、ポワン・ド・ビュー紙は、「動植綵絵 伊藤若冲の幸福な自然画」として「その鮮やかな色と構図の妙,モダンな描線には感嘆させられる。」と報じた。(4)「京都の宝―琳派300年の創造」展他の流派と異なり、師匠から弟子へ直接、技術や精神が受け継がれるのではなく、後世の絵師が私淑する先達から自由に取り入れたいところを取り入れる中で、流派のようなものが形成されていったという琳派。尾形光琳が俵屋宗達に、酒井抱一が尾形光琳にそれぞれ傾倒し、その影響を受けたように、時代や身分を超えて、断続的に継承された。パリ市立チェルヌスキ美術館での本展では、日本国内でも公開される機会の稀な「風神雷神図屏風」のような国宝、重要文化財を含め琳派の傑作を選りすぐって展示。琳派芸術の中心をなす絵画をはじめ、陶芸、漆工などの調度品も取り上げ、日本美術の粋ともいえる琳派の総合性を示す(伊藤若冲(群鶏図)(動植綵絵30幅のうち)宮内庁三の丸尚三館蔵)国宝〈風神雷神図屏風〉俵屋宗達筆 京都・建仁寺蔵 江戸時代 ファイナンス 2018 Nov.33日仏友好160周年を迎えた文化交流(下) SPOT

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