ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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元国際交流基金 吾郷 俊樹1はじめに前号でご紹介した「ジャポニスム2018」は、日本が誇る文化を芸術の都パリを中心に、大規模かつ総合的に、8カ月にわたりフランス全土で紹介するもの。日本政府として類を見ない規模で文化を発信する一大事業であり、日本外交に新たに「文化」の柱を立てるフラッグシップ・プロジェクト。政府主導により展覧会、舞台公演、映画、その他日本人の日常生活に根ざした文化まで含め、さまざまな日本の芸術と文化を幅広く紹介する50を超える公式企画と「ジャポニスム2018」の趣旨に賛同いただける方々による日本関連の自主的な企画からなる。展覧会、舞台公演、映像、生活文化等について、その主なものをご紹介する。2展覧会(1)「深みへ―日本の美意識を求めて―」展7月のオープニングでは、日本の美意識を理解する上で、新しい視点をもたらす「深みへ―日本の美意識を求めてー」展を開催。8月に逝去された、「ジャポニスム2018」の提唱者である津川雅彦氏の発案を長谷川祐子東京藝術大学教授のキュレーションにより、縄文土器から現代アートまで併せて展示し、斬新な切り口で日本の美意識を解明していくもの。これは、「ジャポニスム2018」の基本コンセプトをまとめて、全事業のいわば「目次」となるような統轄的展示。ロスチャイルド館において、伝統的な作品と現代の作品を併せた展示を通して日本の美意識を見せる。例えば、縄文の火焔型土器と、それから想を得た、若手デザイナーのアンリアレイジの彫刻ドレスは異なる芸術媒体と異なる時代の間に存在する調和を表す例だという。様々なテーマや媒体の多様性(絵画、インスタレーション、写真、ファッション、彫刻など)を通して、伝統と革新の2つの要素が一つになっている日本の美学に新しい視点と理解をもたらすという。(2)「teamLab:Au-dela des limites」展(Exhibition View, teamLab:Au-delà des limites , 2018, Grande Halle de La Villette, Paris ©teamLab)ウルトラテクノロジスト集団、チームラボの「境界のない世界」。デジタルの滝が、高さ11メートルの壁から床へ流れ、来場者の足下で流れながら空間に広がっていく作品など、大空間を活かした様々な作品が展開。ラ・ヴィレットの約2千平方メートルの敷地に壮大な滝や花々、人物などのイメージを鮮やかに写し、来場者が描く絵も壁に投影されて作品の一部となり、その映像は触れると形を変えていく。CNNの「最も感動した視覚的瞬間」にも選ばれるなど、世界的に高い評価を得ているこのチーム、現代アートに目の肥えたシンガポール人も唸らせる常設展をシンガポールでもやっている。パリやシンガポールに行く予定のない人でも、チームラボの世界は、日本でも今年6月にチームラボと森ビルがお台場にオープンした常設の「チームラボ ボーダーレス」で体感できる。ルモンド紙も、「デジタルアートに関して言えば,1997日仏友好160周年を迎えた 文化交流(下)~19世紀の「ジャポニスム」から「ジャポニスム2018」まで~32 ファイナンス 2018 Nov.SPOT

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