ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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余談12:岐阜市で大切なお客様を泊めるときは十八楼がお勧めである(注:十八楼からは、何の謝礼も受け取っていない)。鵜飼観覧船事務所の隣にあるという立地の良さもさることながら、その屋号は松尾芭蕉の命名による(「十八楼記」)、というように伝統と格式のある、良い旅館である。「ふるさと」というのは、生まれ育った土地への親近感や愛着を基にして、それぞれの人の意識の中で作り上げられていくものだと思う。私は子供のころ、親の仕事の都合で引っ越しを繰り返しており、「ふるさとはどこですか?」と尋ねられると口ごもってしまうことも多かったが、岐阜県に来て、初めて「ふるさと」が出来た思いだ。東京に出張した帰り、JR東海道線に乗って金華山が見えてくると、大きな安らぎを感じる。山紫水明、山があり、清流がある。岐阜県は、「清流の国ぎふ」づくりとして、岐阜の魅力を高める様々な取組を行っているが、それは、たくさんの方に岐阜に観光に来ていただきたいという思いだけでなく、岐阜を「ふるさと」とされる方が、東京にいても、あるいは海外に住んでいたとしても、岐阜のことを考えると、懐かしいような、誇らしいような、そのような思いを持っていただきたい、そして、岐阜でみんな頑張っているんだから私も頑張ろう、と思っていただけるような「ふるさとづくり」をしたい、という考えに基づいている。私にも「ふるさと」が出来た。今後、どのような場所にいようとも、岐阜のことを聞けば、懐かしく、また誇らしく思うだろうし、それが明日への励みとなることだろう。6結び大垣市に「奥の細道むすびの地記念館」がある。江戸を出発した松尾芭蕉が奥羽、北陸を経て、最後に到達したのが大垣であったことを記念し、芭蕉の辿った道のりを詳しく解説してくれる。「おくのほそ道」は芭蕉にとって集大成となる作品であり、その結びの地は、芭蕉が深く愛し、また、熱烈なファンがたくさんいた大垣しかなかった。「蛤のふたみに分れ行く秋ぞ」大垣を結びの地とするとともに、芭蕉は次なる旅に出発する、ということで「おくのほそ道」は締めくくられている。「清流の国ぎふ」づくりは、知ること、創造すること、伝えること、から成る。ヨソモノである私は、新鮮な驚きとともに岐阜について多くのことを知った。芭蕉の旅に終わりがないように、知ることに終わりはないものの、今ある知識の上に立って、一つでも二つでも、新たなものを創り上げ、次の時代にそれを伝えていきたい、と考えている。 ファイナンス 2018 Nov.31「清流の国ぎふ」からSPOT

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