ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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た魅力的で、通勤中の私の自転車の前を横切って行った生き物だけでも、イヌ(これは綱を外して散歩させている人がいるため)、カラス、トンビ、キジ(!)、ヘビ、カマキリ、ナナフシ(!!)などなど。ナナフシはあまりに珍しかったので家に持って帰り、数日観察した後、長良公園に逃がした。そんな長良川河川敷であるが、当初から「クヌギの木が多いな。これはひょっとして。」と思っていた。河川敷といっても、大河川であるから野球場やサッカー場が何面もとれるぐらいの広大さで、木が鬱蒼と茂った林も存在する。小学生男子の心を熱くするのは、いつの世でもカブトムシ、クワガタ。我が家にも、カブクワが好きで好きでたまらない少年が2人存在する。仕事で遅くなった、6月下旬の、とある夜。河川敷にある、いくつかの木を自転車搭載の電灯で照らしていくと…いた。樹液があちこちから染み出ているクヌギの木に、4匹ほどの小さなコクワガタ。それ以来、いろいろな木を調べてまわり、枝ぶりといい、樹液の出方といい、木の朽ち方といい、ついに理想的な木を発見した。2Lペットボトルを加工したトラップを作り、発酵したバナナを入れる。帰宅の際に木にトラップを仕掛け、朝出勤の際にチェックすると…いた。ペットボトルの底にうごめく3匹のカブトムシ。オジサンであっても、テンションが上がる(通勤途上で何をやっているのか、というご批判は甘んじて受けます)。捕まえたカブトムシを持って帰って、息子たちが喜んだと思ったら、夏の終わりには卵を産んでいた。現在は、孵化した幼虫のお世話に勤しんでいる。余談10:昆虫といえば、岐阜公園内に「名和昆虫博物館」がある。ギフチョウを発見した名和靖博士の創立によるが、年に数回、ホスピタリティに溢れた名和哲夫館長の引率の下、昆虫採集ツアーが開催される。夏にはクワガタ採りツアーがあり、息子がどっさり採って帰ってきた。秋もツアーがあり、ここは父親の威厳をもって「絶対に虫は家に持って帰らないからな。絶対だぞ。」ときっちり言っておいたのだが、現在、家には、カマキリ3匹、ヒラタクワガタ2匹、ゾウムシ1匹、アカハライモリ1匹がいる。父親の威厳は、ダチョウ倶楽部の前ふりにしかならなかったようだ。おまけに、カマキリは生きた昆虫しか食べない、ということで、息子と近所の原っぱに行き、山ほどコオロギを採ってきた。おかげで毎晩自宅でコオロギの鳴き声を聞くことができる。また、アカハライモリはアカムシを食べるということで、ホームセンターで餌を買ってきた(手間がかかる…)。尻尾の形からしてメスなので、息子に「アカハラ イモミ」(愛称:ファイヤーイモミ)という名前を付けられ、日々可愛がられている。5ふるさと夏の終わりの土曜日の夕暮れ時、岐阜グランドホテルの前の川原でBBQをした。日中の暑さが和らぎ、心地よい風が吹き抜けていく。正面には金華山と岐阜城が聳え、目の前には清流長良川が流れている。子供たちは長良川で小魚を追い回したり、水切りをしたりして遊んでいる。BBQをしているうちに暗くなり、目の前を篝火を灯した鵜飼の船が通り過ぎていく。このような素晴らしい体験がいつでもできる、にもかかわらず、その日は我々家族だけであった。いつでもできる、と思うと、人間というのは、なかなか実行しないものなのかもしれない。このように、その土地の良さというものは、ずっとそこにお住いの方よりも、外から来たヨソモノや、一度県外に出て帰ってきた人の方が認識できるものなのだろう。余談11:岐阜県の方で鵜飼を見たことがない人もいる。そもそも鵜飼は漁業の一つとして昔から行われていたが、織田信長が客人をおもてなしするものとして創り上げ(伝統を創るのだから、やはり信長は天才である)、それからは岐阜県でお客様をもてなすとなると、必ず登場する。チャップリンが来日したときも、岐阜基地でフランス航空団が飛行術の教授に来たときも、鵜飼に招待している。もちろん私も、両親を岐阜に呼んだときには一緒に鵜飼を見た。ふるさとの大切な伝統・文化であるので、岐阜にお住まいの方には是非とも体験していただきたいものである。30 ファイナンス 2018 Nov.SPOT

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