ファイナンス 2018年11月号 Vol.54 No.8
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が船舶名、個々の荷物の記号番号、内容及び価格並びに全商品の価格合計を申告書(差出書)にて税関に申告するとともに、仕入書(目録)も提出することとされ*4、税関は荷物の検査や荷物の税関内への移動の権限を有し、開披検査を前提として検査後は荷物をできるだけ元の状態に戻すべき旨が規定されている。また、所有者又は輸入者が航海中商品に損害が生じたことを知った際は、鑑定人に鑑定させ損害率を記した証明書を発行してもらい輸入者はそれをもって商品の価格を減額することとされている。ただし、このことは日仏条約本文第15条に規定する商品価額に疑いを抱いた場合における税関職員による商品価額の増額見積の実施を妨げないとも規定している。さらに、荷物の引取りは、関税納付後に許可証が発行されて可能となることとされている。一方、輸出通関手続については、(輸出者が)船舶名、荷物の記号番号、内容及び価格を申告書(差出書)にて税関に申告することとされている。また、通関前に積み込んだ荷物や禁制品は、日本政府が差し押さえることとされている。(4)第4則【仏文(現代語仮訳)】第4則税関による出港許可を望むフランスの船舶は、二十四時間前までに税関にその旨を通知するものとし、当該期間の経過時において、当該船舶に係る出港許可を受ける権利を有するが、出港許可を税関が拒否したときは、この行政機関の職員は、直ちに船長又は船舶の受託者に当該拒否の理由を通知しなければならず、当該職員は、同じ通告を領事に対しても行うものとする。フランスの軍艦は、積荷目録を提示することなく自由に入港し出港することができる。税関及び警察の職員は、これらの艦を検査する権限を有さない。郵便を運ぶフランス船舶については、同日中に入港申告を行い出港許可を受けなければならず、当該船舶から陸に上がる旅客及び商品についてのみ目録を提示しなければならない。備蓄品を得るために寄港するフランスの捕鯨船及び遭難したフランス船舶は、その貨物の目録を提出する必要はないが、後で貿易を行うことを希望するときは、第一則に規定する様式を遵守して目録を提出しなければならない。船舶の語は、この条約及びその付属書類のいずれの箇所にあっても、常に大型船、3本マスト船、小舟、2本マスト船、スクーナー、スループ船又は蒸気船のことを指す。【カタカナ文】第四ノ キソクミナトヲ イヅル テカズヲ 子ガフフ子ハ 二十四トキ ニツポンノジフニトキニアタル イゼン ウンジヤウヤクシヨヘ ツゲシラスベシ コノキゲンヲ スギテノチハ ソノフ子ニ ミナトヲイヅル テカズニツキ ダウリアリ シカシ ソノミナトヲイヅル テカズヲ イナムトキハ ウンジヤウヤクシヨノ ヤクニンヨリ カビタイン マタハ ソノフ子ノ サシムケサキノヒトヘ スグニ ミナトヲイヅル テカズヲイナムワケヲ ノベ マタ コノコトヲ フランス コンシユルニ シラスベシフランスノ イクサブ子ハ ウンジヤウヤクシヨヘ ミナトヘイリ マタ ミナトヲ イヅル テカズヲ イタスニ オヨバス ○ ソノ イクサフ子ハ ニツポンノ ウンジヤウヤクニン マタハ マハリカタノヤクニン キタラザルヘシフランスノ タヨリヲオクル ジヨウキブ子ハ オナジヒニ ミナトイリ ナラヒニ ミナトヲイヅル テガズヲ イタスコトモナルベシ ○ ニツポンニ アガル リヨカク ナラビニ シナモノニ ツイテノホカハ コクシヨヲ イダスニ オヨバザルベシ シカシコノジヨウキブ子ハ ソノタビゴトニ ウンジヤウヤクシヨニ ミナトイリ ナラビニ ミナトヲイヅル テカズハ イタスベシヨウイシナノタメニ イリキタル クジラレフブ子 マタハ ナンセンハ ソノツミニモツノ コクシヨヲ イダスニ オヨバズ シカシ ソノフ子 カウエキヲ 子ガフトキハ 第一ノ キソクニ サダメシトホリノ コクシヨヲ アヅクベシフ子トイフ コトバハ コノキソクノウチ マタハ コレヲソヘタル デウヤク イヅレノトコロニアルトモ ナウイル バルク ブリツキ ゴウエレツト スループ マタ ワツペルヲ イフト スベシ【漢字かな混じり文】第四則出港手數を願ふ舩々は十二時 佛蘭西二十四時 前に運上役所へ申立へし此期限中に右手數遲々せさる樣取扱は勿論たるへし右手數差止る事あらは日本役人より舩司又は頭立たる者並に其舩荷の取引人等へ其段申渡し佛蘭西コンシユルに申達すへし佛蘭西軍艦は入港出港運上筋*5の手數に及はす運上役人並番兵等差構ふ事なし佛蘭西飛脚の為の蒸氣舩は入港出港の手數を一日にいたし日本に上陸する旅客並に品々の外は告書差出し書面の手數なしといへとも何ヶ度にても入港の度毎に出港入港の手數をいたすへし薪水食料等用意のため入港の鯨漁舩或は難舩は積荷の告書を出さすといへとも若其積荷を賣拂はんと願ふ時は第一則の通定式輸入の手數をいたすへし税則並に條約書中に舩と唱ふるものはナウイル バルク ブリツキ ゴウヱレツト スループ ワツペル等を総ていふなり*4) ただし、実際には運上所(税関)が外交上の紛議を恐れ、外国商人が仕入書の添付を怠るのを黙認した結果、仕入書を提出する者が誰もいない状態になってそれが明治期まで続き、そのために多くの虚偽申告が行われ関税収入が極めて少なかったとされている。(横浜税関編「横浜開港150年の歴史~港と税関~」(三訂版)13頁)*5) 日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編311頁)には「運上筋の」の語がない。14 ファイナンス 2018 Nov.SPOT

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