ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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を、関係性の質が良いワクワクした職場の正のサイクルに変えていく、この関係性の質を変えるのが働き方改革なのです。労働時間を巡るギスギスがチームに悪影響を及ぼしている日本では働き方改革はチームで労働時間と向き合うことから始めるのがよいと思います。5.ダイバーシティと働き方改革(1)働き方改革は女性活躍推進の一丁目一番地働き方改革は女性活躍推進の一丁目一番地です。トーマツイノベーションと中原淳氏の調査によると、女性は長く働きたいと考えていますが、彼女らにとって、NGとなる行動は、上司が長時間労働を評価することです。長時間労働を評価する風土が女性に生き詰まりを感じさせるのです。また、成果を出している女性が何をやっているかというと、「自ら頑張るモード」と「他人を頼るモード」の両方を発動させています。女性が働き続けたい職場というのは、「機会を男性と同様に与えてくれる職場」「助け合いのある職場」「残業を見直す雰囲気がある職場」というのがトップ3を占めています。(2)ダイバーシティ実現のためにダイバーシティ実現のためには、まず働き方改革で会社が変わり、短時間で成果を出す働き方を通じて自分が変わり、会社や家庭でのジェンダー平等を通じて社会が変わることが必要になります。私は女性の年収がもう少しアップしてほしいと思います。そうすると子供の貧困も解消に向かうからです。(3)女性活躍に必須の3条件女性活躍に関しては、男女雇用機会均等法の第1フェーズ、女性だけを対象にした両立支援の第2フェーズを経て、現在はすでに第3フェーズの段階です。男性を含めた全体の脱長時間労働・残業の上限規制、フレックス勤務等柔軟な働き方、男性の両立支援、こういったところが重要です。女性の活躍に必須の3条件、私はこれが重要だと考えます。すなわち、●長時間労働を是正し、時間単位の成果でフェアに評価されること。●年功の廃止。年次と仕事を結び付けない。●父親の家庭参画の推進。この3つです。現在、多くの復職した女性がマミートラックに入り、希望を失っています。4人に1人が昇進を望めない状態です。労働時間における差別というものが企業の中で生じているのです。OECDの調査では、男性の無償労働時間が少ないほど、女性が寝ていないという結果が出ています。また有償・無償労働時間の国際比較を見ると、OECD諸国で日本の女性は一番働いています。日本の男性よりも働いています。これ以上、女性に頑張れというのは限界です。全体の環境を変えていかなければなりません。6.地方創生・少子化と女性(1)若年女性がなぜ地元を捨てるのか地方消滅は20代、30代の女性がいなくなることですが、若年女性がなぜ地元を捨てて出ていくのかというと、両立できる安定した仕事がないからです。今までは仕事がなくても男性が一家を養うので、女性は非正規の仕事をしながら地元に残り結婚を待つことができました。しかし、男性が一家を支えられなくなると、女性は正規の仕事を求めて、地元を出ていくようになるのです。そして移っていった先でワーク・ライフ・バランスが良ければ子供を産むことができますが、移転した先が東京のようにワーク・ライフ・バランスが悪いと結婚しないし、子供も産まなくなるのです。週60時間以上働く雇用者の割合が多い地域では少子化となり、また一日当たり通勤時間が長い地域も少子化になる一方、育児をしながら働いている女性が多い地域は少子化にならない、という結果を示すデータもあります。また、女性のM字カーブ(女性の年齢別労働力率をグラフで表したときに描かれるM字型の曲線のこと。出産・育児期にあたる30歳代で就業率が落ち込み、子育てが一段落した後に戻る。)の深い地域では少子化になっています。74 ファイナンス 2018 Oct.連 載 ■ セミナー

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