ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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(4)働き方改革を担うのは誰かア.経営者私は、まずは経営者が働き方改革を担うべきだと考えます。経営者が本気で評価と報酬の設計が変わるところまでやるのか、本気で取引先に自社の働き方改革について協力を求めているか、このあたりがカギになります。経営者が取引先にきちんと説明することで、現場レベルでの取引先からの無茶な要求を断ることができるのです。イ.社員個人社員個人も業務効率の改善、やめる仕事の選択、テレワーク、会議の削減などできるところから取り組んでいくことが必要です。指示待ちではなく、自分で工夫して仕事に取り組んでいくのです。個人の生産性向上のモデルはワーキングマザーです。彼女たちは、4時や5時に帰らなければならないため、時間効率を最大限に高め、トイレに行く時間も惜しんで仕事をしています。ウ.上司私は、上司(管理職)は改革の要であり、推進者だと考えていますが、改革のしわ寄せも上司に来ています。なので、上司を助けるための仕組みも必要になります。具体的には、上司の評価項目の変更(ダイバーシティ推進など)やイクボス表彰など上司を褒める仕組みなどに取り組むことが大切です。エ.IT紙の資料をやめてクラウド化する、ICタグの導入、営業にタブレット支給とか、ITの活用はいろいろありますが、単に機械が人間に代わるだけにならないようにするには「この仕事は本当に必要なのか」どうかの棚卸が重要になります。(5)マインドセットとアクションチェンジマインドセットとアクションチェンジのどちらが先なのか、ということについては、私はアクションチェンジがまず先で、仕組み、制度、評価などの改革で支え、進捗度の見える化を怠らず、トップが絶えず発信することで1年から2年でマインドセットが起こる、と考えています。4.生産性と働き方改革(1)イノベーションと心理的な安心感Googleによれば、チームの高い生産性を保つ5つの要素(心理的な安心感、信頼性、組織構造と透明性、仕事の意味、仕事のインパクト)のうち、圧倒的に大きな意味を持つのは「心理的な安心感」だということです。この「心理的な安心感」があるとイノベーションが生まれてきます。イノベーションとは「見たことも聞いたこともないこと」「実行可能なこと」「賛否両論を巻き起こすこと」の3つだと言われています。多様性はイノベーションの価値を高めます。また、女性がいることとイノベーションは正の相関があることが研究の結果分かっています。女性の方が、社会的感応度が高いからだそうです。そしてイノベーションにとって最も重要なのは心理的安全性です。他人が何か提案したら、まずは「いいね」と反応すること。そうしないとイノベーション種がつぶれてしまうかもしれないのです。とてももったいないことです。イノベーションの種になるのは、10人のうち、2人ぐらいが「ちょっといいんじゃない。やってみましょうよ。」いうものだそうです。この2人が臆せず発言できる空気があるのか、これがまさに心理的安全性なのです。(2)関係の質が重要「関係の質」が良いことが「思考の質」の良いことにつながり、さらに「行動の質」が良い、「結果の質」が良い、につながっていく、という好循環の成功モデルが研究者によって提唱されていますが、こうした良い関係性があるところは生産性が高いのです。幸福な職場は成果が高いことが日立のAIによって証明されています。社員の幸福とチームの生産性がぐるぐると好循環することが重要なことだと思います。関係性の質が悪いギスギスした職場の負のサイクル ファイナンス 2018 Oct.73夏季職員トップセミナー連 載 ■ セミナー

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