ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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ら、魅力ある大量生産ではない新しい商品やシステムが生まれてくるわけです。ここでは多様性が強みになります。そうなってくると、日本で一番活用されていないのが女性の力ですので、ワンオぺ育児からパートナーも巻き込んだチーム育児へ、男性も一家の大黒柱一人という状態から解放されて、ワンオぺ稼ぎからチーム稼ぎになってくる。つまり人口オーナス期では、働き方は「一律」から「多様」に、「時間の量」から「時間の質」に、「他律(指示待ち)」から「自律」に、変わってきます。そして働き方が変わると暮らしも変わってくるのです。私は最大の少子化対策は働き方改革であると思います。2. 霞が関はなぜ変わらなければいけないのか(1)30代職員のモチベーション低下では、次に霞が関はなぜ変わらなければいけないのか、についてお話しします。理由の1つ目は30代職員のモチベーション低下です。モチベーション低下要因のトップ5には「業務多忙・長時間労働」「社会への貢献、やりがいが感じられない」「上司等からの支援の欠如」「給与・賞与等の処遇」「上司からの否定的な評価」が挙がっています。30代の職員が今後必要と考える支援策としては、「育児や介護等、家庭の事情に配慮した人事」「キャリアの見える化」「今後のキャリア形成に関する上司や人事担当者との面談、意向確認」といったものが挙げられています。また、30代職員は仕事の内容や進め方について新たな提案やチャレンジする頻度が少ないという結果が出ており、この理由として「時間的余裕がない」「財源や人員に制約があり、実現が困難」「これまでの方向性と異なるなど、業務の継続性の観点から実現が困難」といったことが挙げられています。新しい提案はイノベーションの種になるのですが、イノベーションの種がこうして潰れてしまっているのです。(2)社会とのズレから生じる不祥事霞が関が変わらなければならない2つ目の理由は社会とのズレから生じる不祥事です。公務員による様々な不祥事が続いていますが、これがなぜ起こるかといいますと、これまで公務員の皆さんが建前としてはダメだけれど、本音の部分では許されると思ってきたものが、次第に許されなくなってきた、というズレが生じてきているからだと思います。同質性が強い組織というものは、こうした問題を起こすリスクが高いのです。いろいろな人がいて、いろいろなことをいう組織でないと、こうしたズレに気が付かなくなるのです。公務員の任用状況を見ても、年齢構成や性別の面で多様性が低い。女性が少なく、40歳以上の層のボリュームが大きい、という構図です。同質性がもたらす不祥事等のリスクに着目することが重要です。3.働き方改革で儲かるのか(1)日本企業の取り組み事例ア.サイボウズ日本企業でおそらくもっとも多様な働き方を実現しているのがサイボウズという企業です。サイボウズでは100人の社員がいると100通りの働き方が実現しています。100通りの働き方を実現するにはコストがかかりますが、この組織が変わるきっかけとなったのは離職率が28%まで高まってしまったことです。離職率28%というのは、採用しながら走っていっても間に合わないという状態です。そこで社員の意見をいろいろ取り入れていったところ、100通りの働き方になったそうです。離職率が低下していくに従い、売り上げは上昇していきました。社員に自由な働き方をさせることで、このような経済的効果が出てきたのです。イ.味の素企業が導入している働き方改革で私が最高だと思うのが、味の素です。ブラジル駐在経験もある西井社長が旗振り役です。「ブラジル人は働き方が効率的である。のんびり怠けものに見えるかもしれないがそんなことはない。日本でもできないことはない。」ということで、働き方改革を決意されたそうです。3万3千人の社員のうち海外には2万人いるそうですが、海外の社員のうち日 ファイナンス 2018 Oct.71夏季職員トップセミナー連 載 ■ セミナー

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