ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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推進、といった課題を解決するために行うのです。また社会が抱える課題もこれによってかなり改善されると思います。すなわち少子化や地方創生、女性活躍、安全な労働環境、父親の家庭参画、といった課題です。(6)ミレニアル世代の人材獲得競争ア.ミレニアル世代が重視すること今多くの企業で一番の課題だと考えられているのが、ミレニアル世代の人材獲得競争です。どの企業も非常に苦戦しています。ミレニアル世代の人たちがどんなことを考えているかというと、重視するのは「業種」「職種」「勤務地」の順です。若手の人にアンケートを取ってみると、「22時以降の退社はブラック企業」との結果が出ています。彼らのお父さんの帰宅時間が22時です。昭和世代であるお父さんの働き方が若手にとってはブラックなのです。また、彼らは仕事がしたくないわけではなく、成長意欲が高い優秀な若手がたくさんいます。ただ彼らは早く成長したいので、10年育成という下積み期間は長すぎると感じています。もっとどんどん仕事を任せてもらいたいと思っているのです。その一方で、彼らは、あえて仕事をしすぎないようにしています。なぜなら、会社漬けでは成長できないと思っているからです。この会社でしか通用しない人材にはなりたくないのです。また女性の優秀な層の人たちは、家庭と仕事の両立は当たり前だけど、マミートラック(仕事と子育ての両立はできるものの、昇進・昇格とは縁遠いキャリアコース)にも入りたくない、と考えています。また、できる学生ほどマルチタスクです。NPO活動など様々な活動を学生時代からやっており、社会人になってからも継続したいと考えているので、入社後もNPO活動ができないのなら、この会社には入らない、と言う人までいます。つまり、昭和の正社員の場所、時間、業務について、会社の言いなりの無限定制というものが彼らには合わないのです。これは終身雇用を信用していないからです。もちろん彼らが安定志向であることは確かであり、大企業が大好きなのですが、その大企業が自分たちの定年まで存続するとは考えていないのです。イ.企業の対応ミレニアル世代の人材獲得競争のために企業が何をやっているかというと、働き改革です。すでにインターバル規制(1日の最終的な勤務終了時から翌日の始業時までに、一定時間のインターバルを保障することにより従業員の休息時間を確保しようとする制度)を導入する企業が非常に増えています。サッポロビール、キリンビールももうやっておりまして、KDDIでも1.4万人対象で実施しています。味の素では7時間労働に近づけるため、16時半退社となっています。大和証券では2007年から19時前退社を実施しており、不夜城だった金融業界の働き方を改革いたしました。リクルートグループや日本マイクロソフトでは完全テレワークが導入されています。大同生命では男性の育休が義務化されていますし、三重県庁では知事の号令のもと、職員に子供が生まれたら2年間の育児参画計画書を提出することになっています。これは、男性も子供が生まれたら働き方が変わるということを可視化したものです。これは男女がともに活躍できるうえで重要なことです。男性も働き方が変わることで、同じ社内で男女の差がなくなるわけです。今若手の男性の退職が問題になっていますが、転勤が問題の根底にあるのです。AIG損害保険は、働き方改革の一環として、転居を伴う転勤を廃止しました。国内を13エリアに分けて、異動は原則エリア内に限定するのです。こういうことをやるとすぐ学生の人気は上がるわけです。(7)人口ボーナス期と人口オーナス期人口ボーナス期と人口オーナス期というものがあります。人口ボーナス期である昭和の高度成長期には、均質な人が長時間働く、という同質性が強みでした。男性が長時間働くことで勝ってきたので、家では女性によるワンオペ育児・家事、男性は外でワンオペで稼ぐ、という仕組みでうまく世の中が回っていたのですが、人口が重荷になる人口オーナス期になると、多様な人が多様な場所や時間で働き、その多様性の中か70 ファイナンス 2018 Oct.連 載 ■ セミナー

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