ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Instituteはじめにみなさまおはようございます。白河桃子でございます。よろしくお願いいたします。私は主に企業に招かれて働き方改革について講演させていただいています。民間の場合は、働き方改革に関する法律が制定されたこともあり、また大企業がかなり率先して頑張っていますので、危機感を持って取り組んでいます。その一方で、なかなか変われない職種もありますが、その最たるところが霞が関ではないかと思っております。私は一億総活躍国民会議といった大きな会議体に関わり、官僚の方々の、ブルドーザーのように仕事を進めていく働きぶりもよくわかっています。国会待機の問題など、どうにもならない要因もあることはよく承知していますが、自分たちで改革できるところもあるのではないでしょうか。また女性に関しては、女性の官僚の方ともよくお話しさせていただきます。「仕事はしたい、でも諸般の事情でくじけてしまう。」と言う声も聞きますし、「まるで『蟹工船』みたいな状況です。」と訴える女性の官僚の方もいらっしゃいます。今日は民間の事例や霞が関の事例などいろいろな角度からお話しさせていただきます。1.働き方改革とは?(1)働き方改革は経営改革働き方改革について企業に取材に行くと、バリアのない、フリーアドレスのきれいなオフィスを見せられて、「どうです!」と言われることが多いのです。また、素晴らしいテレビ会議システム、AIやRPA(自動化システム)がありますよ、と見せられて、「どうです!」と言われることも多いと思いますが、でもこれは働き方改革の本質ではないと思うのです。働き方改革は経営改革だと私は思います。霞が関の場合は経営ではないのですが、より良い政策を生み出すためには何をすべきなのか、ということになります。「早く帰れ」とか「AI」とか何か一つをやればいいというのではないのです。働き方改革と狭義に捉えず、先にある目的を見ることが重要です。(2)働き方改革関連の法律制定の背景先般の国会で働き改革関連の法律が成立しましたが、これをなぜ今やらなければならないかというと、今起きている3つのシフトというのがあります。1つ目は人権問題です。過労死、過重労働が日本の場合見過ごせないということです。また働き方改革において「実労働時間の把握義務」に注目しています。「実労働時間の把握義務」が課せられることによって、過労死事案において「この人はみなし労働者だから何時間働いているのか分かりません。」という企業側の言い訳が通用しなくなるのです。2つ目は人手不足です。広島県では時給1,300円でも従業員を確保できません。熊本県では震災復興で人手がとられてしまい、市内の飲食店が開けないほどの人手不足になっています。副業、兼業、週3日勤務など多様な働き方で多様な人材が労働市場に参加してもらうことが求められています。そして3つ目、これが一番大きいのですが、デジタルイノベーションの黒船がやって来ていることです。平成30年8月9日(木)開催夏季職員 トップセミナー白河 桃子 氏(少子化ジャーナリスト、作家)日本社会の同質性のリスクから見る働き方改革の必要性と現状演題講師68 ファイナンス 2018 Oct.連 載 ■ セミナー

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