ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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孫作【内幸町】『舎鈴』に見えて『舎鈴』に非ず!『孫作』は、『六厘舎』の精鋭が腕を振るう必食店もしかすると、目ざとい方であればお気付きになっているかも知れない。ある時期を境に、新橋エリアと霞が関・虎ノ門エリアとを行き来する際に見掛ける『舎鈴新橋西口店(日比谷通り沿い)』の外観に変化が生じたことに。そう。認識されていなかった方は、店前を通り掛かる時に一度ご確認いただきたいのだが、同店に掲げられている『舎鈴』の看板の上下が、全て逆さまになっているのだ!ラーメンマニアの間で通称『逆さ舎鈴』と呼ばれている同店の正式名称は、『孫作』。このあたりで種明かしをしよう。実は、都内を代表するつけ麺の名店『六厘舎』の量産型ブランドである『舎鈴(※)』の新橋西口店が、本年5月9日付けをもって完全リニューアル。味を完全に刷新し、『舎鈴』とは全く異なる新店へと再生を遂げた。その際、『舎鈴』の看板の向きを変え、今日にまで至っているのだ。(※) 『舎鈴』とは、2005年に大崎で創業し大行列店として一世を風靡した『六厘舎』の系列店。『六厘舎』の味をより万人向けにシフト。『六厘舎』風の1杯が手軽に楽しめる量産型店舗として、関東圏における主要駅ターミナル、ショッピングモールを中心に幅広く展開している。しかも、同店には、『六厘舎』の名を全国区にまで押し上げた首脳陣がシフトを組んで馳せ参じ、存分に腕を振るうという特典付き。『六厘舎』の創業者本人で、ここ数年経営に専念し、現場で見掛けることが滅多になかった三田総帥までもが、定期的に姿を現すことになっているのだから驚きだ。『六厘舎』のグループが擁する店舗の数は今や、系列店を含めると優に二桁を数える。そのような状況下において、同店の厨房には首脳陣の誰かが必ず立つというのだ。これは、ラーメンマニアならずとも心踊る要素だろう。肝心のつけ麺の味も、ここまで力を傾注しているだけのことはあり、斬新かつ秀逸だ。「鶏・豚等の動物系素材でコクを演出し、節・煮干し等の魚介のうま味で味を調える」。現在は、このような手法が濃厚つけ麺のスープづくりの主流となっているが、あえて、そのような潮流に背を向け、動物系素材(鶏&豚)だけから出汁を採った1杯を創作。スープを口内に飛び込んだ刹那、食べ手は「頬が落ちる」ような感覚を抱くに違いない。熟練の技を駆使し鶏・豚のうま味の粋のみを鮮やかに切り出したスープは、香味野菜の複雑玄妙な芳香の力添えも相まって、レンゲを持つ手が止まらない高みに到達。なお、値は少々張るが、初訪問時には是非、「味豚つけ」を召し上がっていただくことをおススメしたい。スープに浮かぶ大量の豚肉を麺とともに箸で摘み、チュルンと啜り上げれば、気分はもう桃源郷にいるかの如し。麺を通じて口元へと誘われる動物系素材のコクと、豚肉の骨太な味わいとが、オシドリ夫婦のように舌上で「一」と化す構成は、流石の一言。箸を進めている内に、豪勢な肉料理を戴いているような錯覚さえ抱いてしまった。これに並盛で300gに達する圧倒的な麺量も加味すれば、1,000円という価格は、決して不相応なものではないだろう。(店舗情報)住所:港区西新橋1-16-2 山水ビル1F電話番号:03-6206-6646営業時間: 11:00~16:00(LO:15:45)、18:00~23:00(LO:22:30)土曜日:11:00~16:00(LO:15:45)定休日:日曜プロフィールラーメン探究家 かずあっきぃ(田中 一明)1972年11月生まれ。学生時代に出逢った1杯のラーメンに感銘を受け、1995年より本格的な食べ歩きに着手。「ラーメンの魅力の探究」をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンをコンスタントに実食。総食杯数は12,000杯を超える。日本全国のラーメン事情に通暁し、各種媒体にラーメン情報を精力的に発信。 ファイナンス 2018 Oct.67かずあっきぃのラーメン探訪記連 載 ■ かずあっきぃのラーメン探訪記

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