ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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若手職員が自発的に 若手PTを立ち上げ財務局では、地方創生支援や子育て世代向け広報など、様々な地域活性化や地域貢献の取組みを行っています。そんな中、2015年9月、四国財務局の若手職員が自発的に「地方創生支援のための若手プロジェクトチーム(若手PT)」を立ち上げました。以降、20歳代を中心に16名の職員が参加し、プライベートの時間も使いながら、活発に活動を行っています。若手PTは全国に誕生していますが、中でも四国財務局の活動は、とくに注目されています。その背景には、これまでの公務員の仕事の枠を超えた発想があります。一般的な職員の業務は、トップダウンで指示が下り、若手は上司の指示に基づいて業務を行いますが、若手PTは自らが「地域のために何ができるか」を考え抜き、そのアイデアをボトムアップで提案していくスタイルをとっています。一方で四国財務局では、幹部職員も若手PTの提案を積極的に受け入れようという意識が強く、若手PTが活躍しやすい環境があり、相乗効果によって大きな成果が出ています。参加している若手PTメンバーからは「自分たちの活動をきっかけに、民間企業や地方公共団体等が地域の課題解決に向けた連携を深め、行動に移していることが何よりもうれしい」、「様々な方から感謝され、地域の役に立っているという実感を得られた」などの声が聞かれ、地域の役に立つことがモチベーション維持の源になっているようです。次ページ以降は四国財務局の若手職員がこれまでに関わってきた3つの取組みについて紹介します。四国財務局が2015年9月に若手PTを立ち上げた当初からリーダーとして活躍したのが寺西康博さんです。初めての試みだけに試行錯誤を繰り返しながらの活動だったと思われますが、どんな苦労があったのかを聞いてみました。―寺西さんご自身はどんな思いで若手PTに参加したのですか。寺西 財務局では、平成27事務年度から地方創生を積極的に進めていくことになりました。それまで地方創生や地域貢献は幹部職員が中心になって取り組むのが通例でしたが、若手職員だからできることがあるのではないかと考えて、20歳代が中心の16名が自発的に組織を立ち上げました。―当初は苦労も多かったと思いますが。寺西 財務局は、中小企業向けの補助金などを持っているわけではありませんから、直接的な施策が実行できるわけではありません。ですから、若手PTの活動について、地方公共団体の方に説明をしても、最初はピンと来ない様子で、なかなか理解が得られませんでした。―それをどうクリアしたのですか。寺西 徐々に「やる気のある若手が動いている」という熱意が伝わりました。加えて、豊富な人脈など、あまり知られていなかった資源が財務局にあることも理解されていきました。―フォーラムの開催など、これまでの財務局の仕事とは違うものも数多く手掛けていますが、スムーズにできましたか。寺西 若手職員がフォーラムなどを企画する機会は、財務局だけでなく公務員としてもほとんどありません。当初は心配もありましたが、メンバーと議論を重ねて成功させることができました。2月のフォーラムでは、休日に開催したこともあり、地方創生に関し「意欲を持っているけれども何から始めればよいか分からない」あるいは「何かやりたいのでヒントが欲しい」という積極的な参加者が多く、会を盛り上げてくれたのもよかったと思います。―パネルディスカッションには豪華なメンバーが集まりましたね。寺西 とてもありがたかったですね。私が司会をさせていただきましたので、それぞれの方の活動内容を十分に把握した上で臨みました。いかに事前準備が重要であるかを実感しましたね。―寺西さんご自身は現在、相談役としてアドバイスをするお立場になっているそうですが、これから若手PTで活動する人たちには、どのようなアドバイスがありますか。寺西 求められる公務員像は、時代とともに変化すると思います。これまでは、ミスをしない、適切に業務をこなすなどの守りの姿勢が重視されてきましたが、これからは違うと思います。守りの姿勢だけではなく、プラスアルファとしてどんな付加価値を提供できるのかが公務員に求められていると思います。国が進めている地方創生は、攻めの姿勢で臨むには非常によいテーマだと思います。このチャンスを生かして欲しいですね。―地方創生に関して、財務局ではどんな役割を果たしていくべきだと考えますか。寺西 今回の活動を通して、財務局の財産は人脈であることを改めて認識しました。財務局には財政融資、経済調査、金融、国有財産など幅広い業務の中で構築した人脈があります。地方創生を実現するためには「この人とこの人がつながればうまくいく」という課題が多くあるのです。その役割を担えるのは財務局ではないかと思っています。多様なプレーヤーが地域の課題解決に向け一丸となって取り組めるよう、人と人とをつなぎ、地域のプロダクトマネージャーの役割を果たせればと考えます。四国財務局徳島財務事務所総務課寺西 康博 さん公務員の枠を超えた発想で若手職員が地方創生への取組みを主導人と人とをつなぐことで多くの課題は解決できる初代リーダーに聞く若手PTの役割とは ファイナンス 2018 Oct.3注目が集まる! 若手職員プロジェクトチームによる地方創生支援活動特集

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