ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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宅配・輸送業界特有の問題・宅配・郵便業界の労働効率性を向上させる為には、配達の回数と時間を不必要に増やす「再配達」の削減が急務である。近年は駅やコンビニエンスストアでの受け取りや「宅配BOX」の設置等の試みにより低下傾向にあり、国土交通省が目標に掲げる2020年度削減目標の13%程度の達成が期待される(図表7)。・集荷から配送までの時間に、物流倉庫において手作業で積み下ろしを行う「荷役時間」、配送時間まで待機する「荷待ち時間」も、労働効率性の向上を阻む要因となっている(図表8)。「荷役時間」短縮に向けて物流倉庫では機械化が進んでいる他、柔軟な集荷・配送スケジュールによる「荷待ち時間」削減も取り組まれている。・これらの取組みは一定の成果が確認されているものの、人手不足解消には至っていない。更なる労働効率性の向上に加え、IoTやテクノロジーを活用し、労働集約型産業からの脱却に向けた動きが始まっている。図表7 再配達の現状80.480.484.584.585.085.087.087.019.619.615.515.515.015.013.013.00102030405060708090100(%)14年12月17年10月18年4月2020年(目標)※大手宅配事業者3社による調査。※2017年調査から調査方法を変更しているため、14年の数値との連続性はない。1回目配完率再配達率図表8 荷待ち時間の現状1:451:452:442:442:492:490:003:006:009:0012:0015:00荷待ち時間がある運行(46%)荷待ち時間がない運行(54%)(時間)点検等運転荷待ち荷役付帯他休憩不明解決への取り組み・今後・近年、配達作業の無人化を目指す取り組みが注目を浴びている。配送車への自動運転技術の導入やドローンによる配送を目指した実証実験では、宅配・郵便業界以外の企業が参加している(図表9)。こうした技術が実用化され、中長期的には労働集約型産業から装置産業、IT産業への構造変化も発生しうるであろう。・しかし、技術的な制約や体制の整備など課題が多いこともあり、ようやくスタートラインに立った状況であることも確かである(図表10)。足元での労働効率性の改善を進めると同時に、新たな技術の実用化に向けた取組みを加速していくことが求められる。図表9 無人配送実用化に向けての動向年月場所内容2017年4月神奈川県藤沢市DeNAとヤマト運輸が、自動運転車を使った宅配サービスの実験2017年10月福島県南相馬市愛媛県今治市楽天が、海岸から約12km離れた場所のサーファーへドローンを使ってドリンクを届ける実験や、有人島にドローンで野菜を届ける実験2018年3月大分県佐伯市モバイルクリエイトが、ドローンに食料品など約10kgの商品を積み込み、山を越えた先の中間地点の民家と最終地点の公民館に荷卸しと受取を行う実験2017年7月- 18年3月東京都港区東京都品川区ZMPが、自動運転技術を応用した宅配ロボット「CarriRo Delivery(キャリロデリバリー)」を開発し、六本木ヒルズや品川エリアで実証実験2016年4月千葉県千葉市内閣府や千葉市と民間企業が共同で、イオンモール幕張新都心の屋上から隣接する豊砂公園までワインを運ぶ実験図表10 最新技術の導入が物流の人手不足解消に与える影響4.93.122.029.220.721.126.829.825.616.8020406080100IoT/BD/AIの活用により、位置情報のリアル把握・相互把握、自動運転等が実現し、ドライバー不足の問題が解消するのはいつかIoT/BD/AIの活用により、ロボット倉庫等の普及が進み、省人化、無人化が実現するのはいつか2020年2025年2030年2030年以降わからない(%)(出所)国土交通省「平成28年度宅配便取扱実績について」、「トラック輸送状況の実態調査結果」、「宅配便再配達実態調査」、総務省「労働力調査」、厚生労働省「職業安定業務統計」、「賃金構造基本統計調査」、財務省「法人企業統計調査」、経済産業省「電子商取引に関する市場調査」、全日本トラック協会「経営分析報告書」、各種報道 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2018 Oct.53コラム 経済トレンド 52連 載 ■ 経済トレンド

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