ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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コラム 経済トレンド52大臣官房総合政策課 調査員 荻野 修平/関 祥吾/大橋 薫宅配・郵便業界における人手不足について本稿では、宅配・郵便業界における人手不足の要因分析と解決に向けた取組みについて考察した。個人向け宅配・郵便業界の深刻な人手不足・宅配・郵便業界で人手不足が懸念されている。宅配便の取扱い個数は大幅に増加している一方で、就業者は近年横ばいの動きをしており、結果として配達ドライバー1人あたりの荷物取扱数が急増している(図表1)。・有効求人倍率においても、全産業平均に比べて輸送業の伸びが顕著に表れている。需要に応じて求人も増えていると考えられるが、雇用条件に適合し就業する労働者数が十分でない実態が読み取れる(図表2)。・しかし、宅配・郵便業界は労働集約型産業と言われるように、営業収益に対する人件費の割合が高い(図表3)。そのため、単純な賃金上昇または従業員の増加は、企業収益悪化に直結してしまう可能性も考えられる。図表1 宅配便取扱個数と就業者数の推移951001051101151201252007080910111213141516運輸業・郵便業就業者数(ドライバー以外を含む)宅配便取扱個数(トラック利用運送)(2007年=100)※運輸業・郵便業就業者数は2012年より日本郵便株式会社の就業者数を含んでいない。(年)図表2 有効求人倍率00.511.522.533.51177171717172012131415161718自動車運転の職業全職業計(倍)(年)図表3 人件費/営業収益の割合47.7%13.2%0102030405060(%)200910111213141516運送業界全産業(年)宅配物の増加・追いつかない人手・取扱い個数増加の背景に、低い流通コストに後押しされ急速な拡大を続けるEC市場の存在が指摘されている(図表4)。更に、BtoC需要に加えて、ネットオークションや「フリマアプリ」といったインフラの普及によってCtoCのモノの動きも活発になっており、取扱い個数は更に拡大すると見込まれる(図表5)。・就業者数増加が伸び悩む一要因として、相対的な労働時間の長さ・所得額の低さが挙げられる(図表6)。配達時間指定を始めとしたサービス拡大が、長時間労働に結び付いている可能性もある。所得を改善しつつ企業収益を維持成長させるためには、労働時間削減と稼働率向上により労働効率性を向上させることが求められている。図表4 EC市場規模の推移7.88.59.511.212.813.815.116.52.8%3.2%3.4%3.9%4.4%4.8%5.4%5.8%0246810(%)02468101214161820201011121314151617EC市場規模(左軸)EC化率(右軸)(兆円)※EC化率は物販分野を対象。(年)図表5 ネットオークション・フリマアプリの推定市場規模7,3917,6313,4583,5693,0524,83503,0006,0009,00012,00015,00018,00016年17年ネットオークション(CtoCを除く)ネットオークション(CtoC)フリマアプリ13,90116,035ネットオークション全体の市場規模10,84911,200(億円)図表6 各業種の年間労働時間および 年間所得額(2016年)3004005006007008009001,0001,7502,0002,2502,5002,750道路貨物運送業全産業計(万円)(時間)52 ファイナンス 2018 Oct.連 載 ■ 経済トレンド

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