ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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級ブランドの店に並ぶことがステイタスの高さで、かつそれがよいことだと必ずしも言えるものではありませんが、2003年のパリで見た景色を考えると隔世の感を禁じ得ません。ちなみに、ボストンには、トレーダージョーズという割と安売りのスーパーがあちらこちらにありますが、そのお店だけは、よく日本人が買い物をしている姿を見かけました。最近の日本も可処分所得の伸び悩みに伴い、スーパーの安売りが人気だとの新聞記事をみることがありますが、既に海外でもその流れが定着しているのでしょうか。一般論で言えば、海外駐在者には、海外赴任手当等が出ているので、可処分所得はそれなりに高いような気がするのですが。いずれにせよ、高級ブランドショップと安売りスーパーの様子を見ると考えさせられます。GDPについて、日本が中国に抜かれてからもうかなり経つ気がしますが、それでも1人当たりにすれば、まだまだ差があると思います。バブルの頃のように、海外の不動産等を買い漁るのはどうかと思いますが、ブランドショップ街に日本人を殆どみかけないのは、ちょっと寂しい気がします。更にショックだったのは、時計屋さんをみた時です。ブランドショップも入るモールにその時計屋はあるのですが、ありがちですが、代表的な世界の現地時間を大きな時計で表示し、店の看板にしています。時計は3つあり、アメリカ東海岸現地時間、ロンドンの現地時間、そして北京の現地時間を表示していました。ちょっと前ならば、アジアの代表時間は、東京時間であっただろうに、今では、北京のものとなっていました。これは1つの事象にしか過ぎないかも知れませんが、アメリカからも、既にアジアの代表は中国である、と認識されているとしたら、残念なことです。5.アメリカと中国最近の大きな海外経済トピックと言えば、米中貿易戦争でしょうか。ハーバード大学の教授連中に言わせると、トランプ大統領が、「貿易赤字イコール悪である。」という考えに固執し、「経済学的にはナンセンス」、ということなのでしょう。ここでは経済学的なことではなく、米中人の気質を考えてみます。上述のように筆者は、アメリカと中国の両方の駐在を経験しました。そこで、誤解を恐れずに言えば、アメリカ人と中国人の気質は似ている、と言えると思います。共通しているのは、物事をはっきり言うところと、降参しました、参りました、と言うことが嫌いなところ、そして更に、強く出ているようでいて、実は落とし所もしっかり考えているところでしょうか。そこには、日本人のように、「阿吽の呼吸」「言わなくてもわかってくれる(最近のはやり言葉では忖度、というのでしょうか)」といった文化は存在しません。もっとも、米中貿易戦争に関して言えば、本当に「落とし所」を考えて行動・発言しているのか疑問なしとはしません。しかしながら、感情的な面も含め、米中がこじれてしまうのは、実は、お互いの気質が似ていることが、ある程度の影響を与えていると思います。また、さらに付け加えると、アバウトなところ(いい意味でいい加減なところ)も似ていると思います。日本に帰国すると、例えば毎日のゴミ出しなどで、「日本は厳格すぎるなぁ。」と感じます。環境にはやさしくないのかも知れませんが、アメリカと中国での生活は、彼らの「いい加減さ」を感じることが多々あります。米中貿易戦争の今後、ということで言えば、この「いい加減さ」が良いほうに作用してくれることを祈るばかりです。ワシントン・ホワイトハウス前にて。ワシントンは、ボストンからだと、電車で8時間程度かかります。当日は、トランプ支持のTシャツを着た集団がたむろしてました。50 ファイナンス 2018 Oct.連 載 ■ 海外ウォッチャー

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