ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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十万円、という記事がありましたが、筆者のボストンでの住まいの家賃は、まさに同額のウン十万円でした。この家賃で、日本ではタワーマンション(東京の湾岸エリアです!)に住めるのか、と感慨を持ちましたが、筆者の住まいは、外観はともかく、内部はトラブル続きでした。台所の水漏れ及びそれに伴い床が波打つように盛り上がる、電灯の故障、クローゼットの引き出しが開かない、トイレの水流しレバーの故障などなどです。これらについては、修理の人を呼ぶのですが、なかなか来てくれません。やっとアポイントメントがとれても今度は約束を守らないのです。日本の場合は、約束が守れない時は、事前に連絡があるものですが、それすらありません。こちらから連絡すると、「遠いからいけない。ちょっと病院に行く用事ができた。」などと信じられない言い訳が続きます。一応、「ソーリ、ソーリ」と謝ってはくれるのですが。アメリカ在住が長い日本人に聞くと、全ての人が「家の修理系の人間は、約束を守らない。仕事は自分の好みでやっているようだ。」と回答します。中には、「自分で修理することを学んだ。ちょっとした修理なら人に頼まなくとも自分で出来るようになった。」と言う人もいました。「郷に入っては郷に従え。」ということなのでしょうか。しかしながら、郷に従い過ぎるとストレスがたまるものです。以上、生活面でのあれやこれやを雑多に記してきましたが、どんな国に行っても、日本より良いところ、や逆に日本の方が優れている、といった点があるものです。筆者は、どちらかと言うと、海外勤務の経験を持つことを推奨する立場ですが、どこに行っても、メリットとデメリットはあるものです。大切なのは、デメリットを感じた時に、ネガティブに「あぁ、日本に帰りたい。」と思うのではなく、貴重な経験を楽しむ、くらいの心がけが必要なのでしょう。筆者もえらそうなことは言えず、上記デメリットを感じた際に、ストレスで爆発しそうになったことも度々でした。でもよく考えると、日本に住んでいても窮屈に感じる時は、あるものです。物は考えようです。海外暮らしならではの楽しみをたくさん見つけてストレスの低減化を図れば、そのうち、「住めば都」と思えるようになります。4.日本人は何処に?さて、30年程前に同じハーバード生活を経験した方に話を伺うと、日本人の同僚・学生がかなりいて、周りに中国人は1~2名程度であった、と述べられました。筆者はというと…。例えば、「ハーバード日本人会」などの催し物を開催すると、普段何処にいるのだろうと思っていた日本人が、けっこう集まり賑やかな行事になります。しかしながら、普段大学のキャンパス等では、なかなか日本人をみかけることがありません。そのかわり目立っているのが中国人です。講義に出席しても活発に質問するのは中国人、セミナーに出席しても同様です。しかも、彼らの語学力は素晴らしいものがあります。まぁ、厳しい選抜を経て、アメリカに来ているのでしょうから当然と言えば当然なのですが。また、キャンパス内でも大人数で歩いている中国人をよく見かけます。昔に比べ日本からの留学等が減ったとも思えないのですが、中国人のプレゼンスの高さ、日本人の存在感のなさ、というのはよく感じました。最近、アメリカ司法省が、「ハーバード大学の学生選抜において、アジア系を不当に差別している」、という指摘をした、というニュースがありました。大学側は、これは「多様性の確保のため」であるとしていますが、実際、白人、アジア系、中南米系、アフリカ系の順に大学への入りにくさ、というのはあるようです(つまり、白人が一番ハンデが高く、アフリカ系が(点数が低くても)入り易い。)。多様性の確保というポリシーはわからないでもありませんが、こうした逆差別にも拘わらず、中国人が多い、というのはどういうことでしょうか。あるいは、中国人が多くなってしまったので、こうした措置が取られているのかも知れません。これはキャンパス内だけではなく、街中でも同様です。私事で恐縮ですが、筆者が2003年にヨーロッパ旅行をした際、パリの有名ブランドの店に日本人が道路の方までずっと並んでいる様子をみかけたものです。それから15年…。ボストンやニューヨークにも勿論ブランドショップがありますが、(アメリカからみた外国人で)見かけるのは中国人だけです。しかも大人数でかつ若い人が多いという特徴があります。高 ファイナンス 2018 Oct.49海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連 載 ■ 海外ウォッチャー

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