ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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授業そのものは、さすがハーバード大学といった感じで、興味深く知的好奇心をそそられるものが多かったように思います。例えば、マクロ経済の授業では、「警察の調査と犯罪抑止」や「健康維持のためのインセンティブをどう高めるか」など、これって経済なの、という感じの授業もありましたし、金融政策の授業では、イギリスやドイツの元中央銀行幹部や銀行幹部の方を呼んでの講義などもありました。余談ですが、こうしたヨーロッパからの先生は、欧州でのマイナス金利政策は、うまくいっていると自画自賛していましたが…。御存知の方も多いと思いますが、アメリカの大学は、その資金について、寄付がかなりのパーセンテージを占める寄付文化が根付いています。特にハーバードは寄付金額が多く、その資金力は潤沢です。外部の有名講師を多数呼べるのも、その資金力あってこそでしょう。また、ハーバード大学では、日本語を学んでいる学生(スイス出身、コロンビア出身など、様々なひとたち)がおりますが、彼らを相手に、日本について講義をする機会を得て、実施しました。テーマは迷いましたが、筆者は、財務省からの派遣なので、「日本の財政」ということで講義をしました。彼らは、日本語能力もさることながら、日本の政治、経済、社会、文化などよく勉強しています。彼らと交流する機会もあったので、研究テーマを聞いてみると、「明治維新後の日本の警察制度の確立」、「日台・日中関係の比較」など、日本人でも知らないようなマニアックな研究をしている人もいて、日本語の文献もかなり読み込んでいました。逆に、日本になぜ興味を持ったか、を聞いてみると、「ドラえもん」などのアニメを挙げる人が多く、その後の彼らの研究テーマとのギャップを感じつつも、こうした日本のアニメなどのコンテンツの世界への発信の重要性を再認識したものです。さて、上記の「日本の財政」の講義の話に戻ると、彼らは熱心に聞いてくれ、たくさん質問も頂きました。「東京オリンピック後の経済が心配」「若者の活躍の場は?」「どうして財政赤字が拡大したのか」などです。財政赤字については、「日本は(道路、河川などの)インフラ整備が充実し過ぎ。」(暗に、そこまでお金をかけているから、財政赤字が拡大したのでは、と言いたい。)などの指摘を頂きました。アメリカは、(これまでは)移民も含め、若者人口もそれなりに増えているので、日本ほど少子高齢化を心配しなくてもよいのかも知れませんが、いずれにせよ、日本のことをよく勉強し、質問も鋭いものも多く、ハーバードの学生との交流は、筆者のとってもとてもよい勉強になりました。以上が、オフィシャルな面での生活でした。3.ボストン生活(プライベート面)さて、ハーバード大学がありますのは、アメリカ・マサチューセッツ州ボストンの街です。ボストンは、マサチューセッツ州最大の都市であり、州都でありますが、中心部は意外とコンパクトにまとまっており、かつ公共交通機関が発達しているので、ガイドブック等には、「アメリカは車社会であるが、ボストンは、車がなくても生きていける。」などと書かれています。人口は、狭義のボストンエリアでは、60万人台、近郊の市街地を入れた大ボストンでは、400万人台となります。筆者は、財務局出身なので、財務局存在都市との比較で言えば、中規模クラスの財務局である東北・中国財務局所在地の仙台・広島クラスの都市かな、というのが生活した実感です。最近では、ボストンは、アマゾン(有名なあのamazonです)の重要拠点都市となることが決まり、地元では、それなりに盛り上がっていますが、産業都市というより、ハーバード、MIT(マサチューセッツ工科大学)、各医療関係大学などがあり、学問、芸術等が盛んな古都というイメージもあるかと思います。政治では、伝統的に民主党が強く、筆者も、トランプ現大統領を褒めるアメリカ人(ボストン人)とは、ついに、出会うことは出来ませんでした。なお、現地では、アメリカのテレビ番組しか視聴出来ませんでしたが、夜のトーク番組やバラエティ番組では、毎晩「今日のトランプ大統領のツイッターでの発言など」が取り上げられ、かつ、その発言自体がギャグとしてのネタになっていました。確かに「自由」の国ですが、毎晩、国の指導者がギャグのネタになるのもどうですかね…。街中を歩いてみると緑が多く、そこは国全体の土地の広さを感じたりもします。筆者は、地下鉄も走って ファイナンス 2018 Oct.47海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連 載 ■ 海外ウォッチャー

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