ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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もなりました。」という。この「ジャポニスム2018」は、「『日本の美』総合プロジェクト懇談会」(主催:安倍総理、津川雅彦座長)の提言を受けて、2016年5月、安倍総理からオランド仏大統領(当時)に対し、日仏友好160年にあたる2018年、パリを中心に大規模な日本文化紹介行事を実施することにつき協力を要請し、合意したことによる。タイトルである「ジャポニスム2018:響きあう魂」には二つの意味が込められている。1つは、過去から現代まで様々な日本文化の根底に存在する、自然を敬い、異なる価値観の調和を尊ぶ「美意識」。日本人は、常に外部から異文化を取り入れ、自らの文化と響き合わせ融合させることで、新しい文化を創造してきた。多様な価値が調和し、共存するところにこそ、善悪を超えた「美」があるとする日本文化ならではの「美意識」を世界に紹介すること。2つ目は、日本とフランスの感性の共鳴。文化芸術を通して日本とフランスが感性を共鳴させ、協働すること、さらには共鳴の輪を世界にひろげていくことで、21世紀の国際社会が直面している様々な課題が解決に向かうことを期待するとされる。(4)パリ(エッフェル塔が最大の呼び物となったフランス革命100周年の1889年のパリ万博の鳥瞰図、博覧会―近代技術の展示場、国立国会図書館蔵)なぜ、パリなのか。どの世界でも、一目置かれる存在というのはある。デザイナーの桂由美曰く、「モードの世界ではパリが一番。やはり皆パリを目指す。」モードに限らず、文化の世界ではフランスは一目も二目も置かれているらしい。アメリカ人がWonderful!と言っても、皆納得するわけではないが、フランス人がTrès bien!と言うと、どうやら文化の世界では、フランス人が言うのならそうなのだろうということになるらしい。開催地としてフランスを選んだことについて、国際交流基金の安藤理事長は「まず、私たちはフランス人が日本文化を最もよく知っている人々と考えているからだ。この野心的な事業を進めるためには、世界的なショーウインドが必要だった。私たちはニューヨーク、ロンドンをはじめ多くの都市での開催の可能性を検討したが、結局パリは、文化という側面から、引き続き日本文化を世界全体に発信できる都市だという結論に達した」という。とはいえ、フランスで事業を実施するのは容易ではないらしい。アメリカ人、イギリス人、ドイツ人、イタリア人、フランス人、日本人の客が乗った豪華客船が航海の最中に沈みだし、船長は乗客たちに速やかに船から脱出して海に飛び込むように、指示しなければならなくなったときに船長が言うセリフというジョークがある。アメリカ人には、「海に飛び込めば、あなたは英雄ですよ。」というべし。フランス人に対しては何と言うべきか。正解:「飛び込まないでください。」。ちなみに、日本人には、「みんな飛び込んでいますよ。」が正解とのこと。他の国向けのセリフはご想像に任せる。日仏首脳間の合意でパリで日本博が開催されることとなっても、現場の美術館の館長、専門家が納得しないと動かない。彼らも、自分の客層に受けそうもないことはやらない。ただ、いったん受けると決まれば、自分たちの固定客層に向けて、本気でPRする。本博覧会の記者発表も日仏の特色が良く表れていて、日本だとみんなが知っている有名人を呼ぶというような形になるが、フランスだと、ルーブル美術館の館長などが自分の言葉でとうとうとまくし立てる。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が決定されたブエノスアイレスでのIOC総会での高円宮妃殿下のスピーチの記憶も新しいが、フランス語は国際機関での公用語である。北米、カリブ海、南米、インド洋、中東、アジア、オセアニア、そして、近年、中国の影響力が急速に高まり、日本の存在感が薄れていくアフリカで過去にフランス統治下にあった国や地域では、フランスが公用語、通用語として今日 ファイナンス 2018 Oct.43日仏友好160周年を迎えた文化交流(上) SPOT

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