ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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大使としては、この他、当時、日仏関係で懸案になっていた仏領インドシナの関税問題解決の模索という重要なミッションについて、メルラン インドシナ総督の来日という成果を上げており、これを契機に関税問題が解決していったという。クロデール大使は、駐日大使の後、駐米大使、駐ベルギー大使になり、1955年に亡くなったときは、ノートルダム大聖堂で国葬されている。なお、今のフランス外務省のマセ次官の前職は駐日フランス大使であり、「ジャポニスム2018」の日仏合同委員会のフランス側トップを務めていた。(7)アンドレ・マルローまた、アンドレ・マルローは、フランスで20世紀のもっとも偉大な作家の一人と言われ、ド・ゴール大統領時代の文化大臣。マルローが日本と出会ったのは、まだ15歳にもならない頃、「子供の頃、ときどきギメ美術館に連れて行かれた。…日本の磁器は洗練の極みに思えた。」という。マルローは18、9歳の頃から日本の美術雑誌「国華」(朝日新聞社刊)を集め始め、度々日本を訪れている。政府の要人であるマルローが日本の芸術表現に関心をもっていることで、展覧会やイベントが自然と増え、文化大臣のときには、ミロのヴィーナスの日本貸出しをするなど、日本でフランス関係のイベントが、フランスで日本関係のイベントが行われた。ミロのビィーナスの展覧会の入場者は172万人に達したという。3「ジャポニスム2018」のコンセプト(1)「ジャポニスム2018」への期待そして、日仏修好通商条約が締結されてから160年となる2018年、「ジャポニスム2018」は2018年7月から2019年2月までパリを中心にフランスで実施されている。伝統から現代まで、展示、公演、映像、生活文化などの多種多様な日本文化・芸術を紹介する一大プロジェクト。本プロジェクトの実務を取り仕切る国際交流基金 増田是人ジャポニスム事務局長は、「『ジャポニスム2018』を通じて、フランス人が19世紀に味わったような新鮮な驚きと発見をしていただき、これが新たなジャポニスム旋風を巻き起こすことを期待しています。」と語る。(2)浮世絵ジャポニスムのきっかけになったのが葛飾北斎の浮世絵だったといわれているように、今日においても、フランスにおける日本美術の代名詞は「浮世絵」で、ゴッホは浮世絵を何百枚も持っていたというし、今もパリの美術館では頻繁に浮世絵展が開催され、常に賑わっているという。今日、日本人でも浮世絵に馴染みのある人はあまり多くないのではとも思うが、興味のある人には、毎年秋に日本浮世絵商協同組合が銀座で開催する浮世絵オークションは、素人でも入札に参加できる。日曜日に行われるオークション前に2日間ほど下見期間があり、その間、じっくり作品を見ることができる。それぞれの浮世絵には美術館の浮世絵には決してついていない値札がついている。とても手が出ないかと思いきや、そうでもなく、オークションは最低1万円の「成行き」から競り上げ方式。結構、買えそうなものもある。やはり値が張るのは東洲斎写楽の大首絵、初値が1,000万円を超えているのもある。写楽の作品は寛政6年のわずか1年足らずの間に描かれたものしかないからレア度が違うという。ふと見ると、外国人が熱心に浮世絵の状態を観察し、誰かに携帯電話でその絵について説明している。聞けば、神保町の浮世絵の画廊の店主だという。浮世絵のマーケットがあるのを実感する。今年9月の第29回浮世絵オークションに出展された葛飾北斎の作品 浮世絵商協同組合提供 ファイナンス 2018 Oct.41日仏友好160周年を迎えた文化交流(上) SPOT

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