ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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(2)第2則【仏文(現代語仮訳)】第2則日本税関は、(軍艦を除き)港に入港したすべての船舶にその職員を乗船させる権限を有する。税関のすべての職員は、敬意をもって遇されるものとし、かつ、当該職員に対し与えることができるすべての便宜を与えられるものとする。いかなる商品も税関の特別許可がある場合を除き、日の出前及び日の入後に陸揚げしないものとし、かつ、船倉及び船荷が収められている場所に通ずる船舶のその他の出入口は、日の入から日の出までの間の時間において錠による封印又はその他の封鎖の方法により日本の公務員により管理されるものとし、許可なく特定の個人が封鎖されるべき当該出入口の一を開き又は封印、錠若しくは日本税関の職員が封じたその他の封鎖を破壊した場合には、それぞれの違反ごとに324フランの罰金を科しうる。以上のとおり*13、日本税関に適法に申告されずに、ある船舶から陸揚げされたすべての商品は、調査及び証拠が得られた後、没収されるものとする。入港の目録において申告されていない価値ある商品を隠匿しつつ日本の収入を不正に減ずる意図を有して保有する商品の荷物は、没収される。フランスの船舶がまだ開かれていない日本の港において密輸を行い又は商品を持ち込もうとしたときは、その商品は、日本政府において没収するものとし、当該船舶にはそれぞれの違反ごとに5400フランの罰金を科する。修理が必要な船舶は、そのために、その船荷をいかなる税も払うことなく陸揚げすることができる。このように陸揚げされたすべての商品は、日本の当局の管理の下に置かれ、かつ、倉庫保管、作業及び監視のためになすべきすべての支出は有償とする。ただし、その船荷の一部が売却される場合には、その譲渡される部分について、適法な税が支払われなければならない。船荷は、いかなる税も払うことなく同じ港に停泊する他の船舶に積み替えることができる。ただし、すべての積み替えは、すべて、日本職員*14の監視の下、税関当局が取引が善意である証拠を得た後、かつ、当該当局が積替えの実施の許可を与えた場合に行われなければならない。阿片の輸入は禁止とし、貿易を行うために日本に到着し、かつ、船内に3斤を超える阿片を有するすべてのフランス船舶は、この量を超える部分については日本当局による没収及び破壊に遭うものとし、アヘンの密輸を行い又は行おうとするすべての個人には、密輸の対象となる阿片1斤ごとに81フランの罰金を科しうる。【カタカナ文】第二*15 キソクニツポン ヤクシヨハ ソノ ミナトウチノ フ子ゴトニ 「イクサフ子ヲ ノソキ」 ウンシヤウヤクニンヲ サシヲクコト タウゼンナリ ○ スヘテ ウンジヤウヤクニンヲ テイ子イニ トリアツカヒ ソノフ子ニテ ナルベキ サウオウノ ヨウジヲ タツスベシ○ ヒノ イリテ イヅルマデノ アヒダハ ウンジヤウヤクシヨノ ヤクニンヨリ ベツダンノ ユルシアル ホカハ フ子ヨリ シナモノヲ オロスベカラズ マタ デイリグチ ソノホカ スベテフ子ウチノ ニモツヲ イレタル バシヨニ トホルトコロハ ヒノ イリテイヅルマデノ アヒダハ ニツポンノ ヤクニンヨリ コレニ インジヤウ ソノホカノ フウジモノヲ モツテ カタメオクベシ ○ モシ ニツポンノ ウンジヤウヤクニンヨリ カクノゴトク カタメオキタル イリクチヲ タウゼンノ ユルシナシニ ヒラキ マタハ インジヤウ ソノホカノ フウジモノヲ ヤブリ マタハ トリノゾクヒト アラバ カクノゴトク オカシタル ヒトビト オカシタルゴトニ 三百二十四フランクノ クワレウヲ ハラフベシニツポンノ ウンジヤウヤクシヨニ タウゼンノ サシダシヲ イダサズシテ フ子ヨリ オロシ マタハ オロサント コヽロミタル シナジナハ コノタビ ツキニ サタメタルトホリニ トリオサヘ トリアゲニ オヨブベシニツポン ヤクシヨノ シユナフヲ サマタゲン シユイニテ モクロクガキノ ウチニ ノセザル トコロノ アタヒアル シナジナヲ ツヽミシナノウチニ カクシアラバ ソノ ツヽミシナハ トリアグベシモシフランスノフ子 ニツポンノ ヒラカザルミナトニテ シナモノヲ カクシ アキナヒ マタハ カクシ アキナハント コヽロミシトキハ ソノスベテノシナヲ ニツポンノ ヤクシヨニ トリアグベシ ナラビニ ソノフ子 オカシタルゴトニ 五千四百フランクノ クワレウヲ ハラフベシシユフクヲ イタスベキフ子ハ ソノツミニモツノ ウンジヤウヲ ハラハズシテ ヲカニ アグベシ カクノゴトク ヲカニ アゲタル スベテノシナハ ニツポンノ ヤクニン アツカリ オクベシ スベテ クラノカリチン シゴト ナラビニ バンニンノタメ サウオウノ チンギンヲ ハラフベシ シカシモシ ソノツミニモツノ ヒトワケヲ ウリハラフトキハ カクノゴトク ウリハラヒタル ヒトワケニツキ サダメノ ウンジヤウヲ ハラフベシウンジヤウヲ ハラハズシテ ツミニモツヲ オナジ ミナトノウチノ ホカノフ子ニ ウツスコトナルベシ シカシ スベテ ホカノフ子へ ウツスコトハ ニツポンノ ヤクニンノ ケンブンニテ ウンジヤウヤクシヨノ ヤクニンニ ソノシゴトノ タヾシキコトノ シラベ ジフブンニ トヾイテノチ ソノヤクニンヨリ ワタス ユルシガキヲモツテ イタスベシアヘンヲ モチワタルコトハ キンゼイユヱ ニツポンニ カウエキニキタル フランスノフ子 アヘンノメカタ 三ギンヨリ オホク フ子ウチニ モチヲルトキハ ソノヨブンハ ニツポンノ ヤクニン トリアグベシマタ アヘンヲ カクシアキナヒ マタハ カクシテ アキナハント コヽロミルヒト マタハ ヒトビトハ カクノゴトク カクシアキナヒ マタハ カクシ アキナハント コヽロミタル アヘン 一キンゴトニツキ 八十一フランクノ クワレウヲ ハラフベシ*13) カタカナ文、漢字かな混じり文、蘭文さらには日英条約貿易章程でも、「以下のとおり」となっており、仏文がci-dessous(以下)を誤ってci-dessus(以上)と規定したものと思われる。*14) 普通に訳せば「日本人雇用者」。日仏条約本文第8条と同じく、仏文上「日本の公務員」と規定すべきだったと思われる。*15) 「第二」の後に「ノ」が欠落している。 ファイナンス 2018 Oct.33日仏修好通商条約、その内容とフランス側文献から見た交渉経過(5) SPOT

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