ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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第17条は、フランス軍艦の用品は関税支払なしに陸揚げしフランス側警備の倉庫に保管できる一方、用品売却の場合には買入者が日本の税関当局に必要な関税を支払うことを定めている。日米条約第4条、日英条約第11条、日露条約第10条に同様の規定がある。(19)第18条第18条は、日本人がフランス人に対し返済を行わない場合、日本の当局がその日本人を召喚し債務を返済させるべく措置を講ずるものとし、フランス人が日本人に対して返済を行わない場合、フランスの当局がそのフランス人を召喚し債務を返済させるべく措置を講ずるものとしている。一方で、両当局とも、これらフランス人又は日本人が負っている債務の肩代わりの責任を負わないとも規定している。日英条約第7条に同様の規定がある。(20)第19条【仏文(現代語仮訳)】第19条この条約が発効した日から、日本皇帝陛下によって他のすべての国の政府又は臣民が保証されており又は今後保証されることになるすべての特権、免除及び利益は、フランス政府及びその臣民もまたこれを自由に享受することをここに明確に規定する。【カタカナ文】第十九条コノノチ ニツポンヨリ グワイコクノヒトヘ ナニニテモ リエキヲアタフレバ フランスノセイフ マタハ フランスノヒトニモ ドウヤウニ リエキヲ アタフベシ【漢字かな混じり文】第十九條以後何事にても外國人へ免許したる事は佛蘭西政府又は佛蘭西人へも同様に免許あるへし【漢字かな混じり文】第十七條佛蘭西の軍艦に属したる肝要の品々は運上なく神奈川並に箱館長崎*1の庫に入置佛蘭西番人守るへし若其品日本人又は外國人へ賣拂ふ時は買取たる人より外品同様日本役所へ運上を出すへし【仏文(現代語仮訳)】第18条日本人がフランス臣民に対して返済すべきものを支払わず又は不正に身を隠したときは、権限ある日本の当局は、当該日本人を裁判に召喚し、かつ、その債務の返済を得るために、当該当局に属するすべてのことを行うものとし、また、フランス臣民が不正に身を隠し又は日本人に対してその債務を支払わなかったときは、フランスの当局は、当該不正実行者を裁判に召喚し、かつ、当該者にその負債を支払わせるために当該当局に属するすべてのことを行うものとする。フランスの当局及び日本の当局のいずれも、フランス人又は日本人によって負われた債務の支払の責任を有しない。【カタカナ文】第十八条ニツポンノヒト フランスノヒトヨリ シヤクセンヲオヒ ハラハズシテ シユツポン イタシタルセツハ ニツポンヤクニン ギンミイタシゼヒ ハラハスベシ フランスノヒト ニツボンノヒトヨリ シヤクセンヲオヒ ハラハズシテ シユツポン イタシタルセツハ フランスコンシユル*2 ギンミイタシ ゼヒ ハラハスベシ○ ニツポンノヒト フランスノヒトヘシヤクセン アルトモ フランスノヒト ニツポンノヒトヘ シヤクセンアルトモ フランスト ニツポンノ ヤクニンヨリ ツクナフコトナシ【漢字かな混じり文】第十八條日本人佛蘭西人よりの借財を拂はすして出奔いたしたる節は日本役人吟味いたし拂方いたさすへし佛蘭西人日本人よりの借財を拂はすして出奔いたしたる節はコンシユル吟味いたし拂方いたさすへししかし双方役人より其借財を償ふ事は成さヽるへし*3*1) 日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編301頁)では「長崎箱館」と、フランス外務省外交史料館所蔵の漢字かな混じり文の条文とは順番が逆である。ちなみに、仏文、蘭文も「箱館長崎」となっている。*2) フランス外務省外交史料館所蔵のもう一通のカタカナ文は「フランスノ コンシユル」と規定。*3) 日本の条約集(締盟各国条約彙纂第一編302頁)では「為さヽるへし」の字が用いられている。 ファイナンス 2018 Oct.27日仏修好通商条約、その内容とフランス側文献から見た交渉経過(5) SPOT

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