ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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在フランス日本国大使館参事官 有利 浩一郎今回は、日仏修好通商条約第16条から第22条まで及び同条約に付された貿易章程第1則及び第2則について、フランス外務省外交史料館所蔵の仏文(筆者による現代語仮訳)、カタカナ文、漢字かな混じり文を元に解説することとしたい(仏文原文は条約本文を本文末に掲載し、貿易章程の分は次回に掲載)。4日仏修好通商条約の内容(17)第16条第16条は、フランス船舶が遭難し、日本の海岸に漂着し、又は日本の港に待避した場合に、日本の当局が、当該船舶に出来る限りの援助を与え丁寧に取り扱うこと、最も近いフランス領事館への移送を行うことを定めている。日英条約第12条に同様の規定がある。(18)第17条日仏修好通商条約、その内容と フランス側文献から見た交渉経過(5)~日仏外交・通商交渉の草創期~【仏文(現代語仮訳)】第16条フランス船舶が遭難し若しくは日本帝国の海岸に漂着し又は日本皇帝陛下の領土内における港に避難場所を求めざるを得なかったときは、その事実を知った権限ある日本の当局は、直ちに当該船舶に可能な限りすべての援助を与えるものとする。船上の者は、温情をもって取り扱われるものとし、必要な場合には、最も近いフランス領事館に赴く手段を当該者に対し提供するものとする。【カタカナ文】第十六条フランスノ フ子 ナンセン マタハ ナンプウニアヒ ニツポンノヂニ ヘウチヤク イタシタルコトヲ ニツポンノヤクニン ウケタマハリタルセツハ ナルタケ ソノヒトビトヲ タスクベシ ソノヒトビトヘ フビンヲクハヘ ナルタケ ソノモヨリノ ミナトニヲル フランスコンシユルノ トコロヘ オクルベシ【漢字かな混じり文】第十六條佛蘭西舩難舩又は難風に逢日本の地に漂着いたしたるを日本役人承はらは成丈其人々を救ひ覆愍を加へ最寄の港にある佛蘭西コンシユルへ送るへし【仏文(現代語仮訳)】第17条フランスの軍艦の使用に供する用品は、神奈川、箱館及び長崎において陸揚げし、かつ、フランス政府の雇用者の警備の下、関税を支払う必要なく、陸上の倉庫に置かれることができる。しかしながら、当該用品が、日本人又は外国人に対して売却された場合は、その取得者が、当該用品に適用される関税の金額を権限ある日本の当局に対し支払うものとする。【カタカナ文】第十七条フランスノ イクサブ子ニ ゾクシタル カンヨウノ シナジナハ ウンジヤウナシニ ハコダテ ナガサキ ナラビニ カナガハノクラニ イレオキ フランスノヤクニン バンヲイタスベシ モシ ソノシナ ニツポンニテ ニツポンジン マタハ グワイコクジンヘ ウルセツハ ソレヲ カヒトリタル ヒトヨリ ホカシナトドウヤウニ ニツポンヤクニンヘ ウンジヤウヲ イダスベシ26 ファイナンス 2018 Oct.SPOT

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