ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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く返済の目途が立っていない状況です。こうした借金は、子どもたちや孫など「将来世代」に負担を押し付けることになってしまいます。こうした受益と負担のバランスを国際的に比較してみると、例えば、フィンランドは高負担・高福祉で、アメリカが低負担・低福祉となっている一方、日本は低負担・中福祉となっています。国の制度にそれぞれ違いはあるものの、社会保障制度を持続可能なものとするためには、今の受益と負担のバランスでよいのか、私たち一人ひとりが考えていく必要があるのではないでしょうか。このように、借金が増大してきた背景としては、少子高齢化の進展が挙げられます。国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、2017年時点における高齢化率(65歳以上人口の割合)は27.8パーセントと、人口12,653万人の約3割が65歳以上ですが、2065年には、全人口8,808万人となる中、その約4割弱が65歳以上になると予想されています。そして、75歳以上になると他の世代に比べ、一人当たり医療費や介護給付費は大幅に高くなることから、高齢化の進展により、社会保障にかかる支出が次第に増えていきます。1988年度と今年度の歳出構造を比較すると、ここ30年で、公共事業、教育などの費用はほとんど変わっていないにも関わらず、社会保障費は約3倍に増えています。そして今後、2025年に団塊の世代の全員が75歳以上に、2035年以降には第2次ベビーブーム世代が65歳以上になっていくことを踏まえれば、将来の社会保障費はさらに増加していくことが見込まれます。こうした社会保障の構造変化について、「胴上げ型」社会から「肩車型」社会への変化である、とよく言われます。すなわち、50年前(1965年頃)は、約9人の現役世代で1人の高齢者を支えており、「胴上げ」のような状況でしたが、現在は現役世代2人で1人の高齢者を支える「騎馬戦」のような状況であり、約40年後には約1人の支え手で、1人の高齢者を支える「肩車」状態になるといわれています。こうした状況を少しでも改善するためには、社会保障の支え手を増やすことが必要です。「人生100年時代」においては、高齢者が元気でいきいきと働き、社会の支え手になっていけるでしょう。また、社会保障の対象として、高齢者だけではなく、将来を担う子どもたちを支えていくことも重要です。公の制度(「公助」)としては、平成25年からの「社会保障と税の一体改革」において、社会保障の充実の対象分野を「子ども・子育て」にも拡大し、消費税率の引上げにより得られた増収分は、子ども・子育てのためにも使われることになりました。来年10月の消費税率引上げに伴って得られる増収分である約2兆円についても、幼児教育の無償化に充てることとされており、高齢者だけでなく、子ども・子育て世代を含めた全世代型の社会保障に向けて改革を行っているところです。また、個人でできること(「自助」)の一例としては、自分が健康でブレイクダウン。「税金の使い道」について税金の使い道28年度予算額1人あたり(年額)1人あたり(月額)社会保障(年金や医療、福祉などにかかるお金)32.0兆円25.1万円2.1万円公共事業(道路や堤防、港などにかかるお金)6.0兆円4.6万円4千円文教、科学(学校や研究などにかかるお金)5.4兆円4.2万円3千円防衛(自衛隊等にかかるお金)5.1兆円4.0万円3千円その他(農業や中小企業、海外支援などにかかるお金)9.5兆円7.4万円6千円一般歳出合計57.8兆円45.4万円3.8万円地方財政(都道府県や市町村に配るお金)15.3兆円11.9万円9千円国債費(国の借金を返すためのお金)23.6兆円18.5万円1.5万円合計96.7兆円76.0万円6.3万円税金等28年度 予算額1人あたり (年額)1人あたり (月額)所得税(個人の給与などからの税金)18.0兆円14.1万円1.2万円消費税(モノやサービスを買った時にかかる税金)17.2兆円13.5万円1.1万円法人税(会社の利益などからの税金)12.2兆円9.6万円8千円その他収入(酒税、たばこ税、相続税、税外収入等)14.9兆円11.8万円1万円合計62.3兆円49.0万円4.1万円不足分28年度1人あたり(年額)1人あたり(月額)34.4兆円27.1万円2.3万円(これまでの合計)838兆円664万円 ファイナンス 2018 Oct.21ファザーリング全国フォーラムinひろしま に参加SPOT

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