ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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育と(2)仕事を繰り返しながら、現役でいる期間をどれだけ延ばせるのかが今後は重要になってくるわけです。もちろんお金以外にも、健康や仲間という無形資産も大事になりますし、余暇も「リ・クリエーション」、つまり自分を「再創造」する時間にしていく必要があります。それでは、この「人生100年時代」を生き抜くために、まず大事なお金について国はどう設計しているのか、今後どうなっていくのかについて、財務省の恵﨑氏にお話ししていただきます。財務省の予算編成担当者による講演○恵﨑本日は、「家族で話そう!国と家庭のお金の話」というテーマでお話しさせていただきます。国の制度やお金の話というと、とても大きな話で身近には感じられないかもしれません。でも、国のお金が、医療費や救急車などに使われていることを思い浮かべていただけるとわかるように、実は私たちの身近な生活と切り離せないことなのです。私が働いている財務省は、国のお金をどのように集めて、どのように使うかを考えているところです。お金には限りがあるので、すべての政策に希望通りのお金を使うことはできません。したがって、お金をかけずに同様の効果を実現できないか、どの政策を優先的に実現させるべきか、といった様々な観点からお金の使い途を考え、各省庁と議論しながら、国会に提出する予算案をつくっていきます。これはご家庭でも、同じではないかなと思います。例えば、皆さんもお子さんにお小遣いをあげるとき、優先順位をつけてお小遣いの範囲内で買えるものを選ぶように教育されているのではないでしょうか。昨今、「人生100年時代」といわれますが、これまでの「3ステージ」から「マルチステージ」を生きていくために、自分たちで考えて選んでいく時代になってきています。私も子どもを持つ立場として、子どもには世の中のことを知り、お金の使い方をはじめとして、自分で考える力を身につけてほしいと思っています。本日は、国と家庭にまつわるお金の話を皆さんとしながら、お家に持ち帰っていただいて、社会のことやお金のことを家族と話せるような、そんな機会にできたらと思っています。さて、皆さんは、公共サービスの受益と負担について、どのように認識されているでしょうか。例えば医療費について、保険料や税金を払っているから、窓口では3割の自己負担で済んでいるというのはご存知かと思います。未就学児の場合、自己負担は2割ですが、広島県では自己負担は500円になっているように、地方自治体によっては、自己負担額を助成し、もっと自己負担を抑えているところもあります。東京都だと未就学児の医療費の自己負担は無料となっていますが、実は、小児科でお子さんがよく処方される保湿剤の「ヒルドイドクリーム」は、50gで1,185円かかっています。自己負担が無料であっても、その費用は、税金、保険料、そして借金から賄われているため、実は無料ではないということを忘れないようにしなければなりません。自分たちが支払っている税金や借金で賄われているということを考えれば、コスト意識を持って、公共サービスを利用していきたいものですね。さて、公共サービスに使うお金を「歳出」といい、税金や借金として集めたお金を「歳入」といいますが、今の日本の「歳出」と「歳入」のバランスは、大きな課題を抱えています。国の予算を見てみると、歳入は税金だけでなく、新たな借金をすることによって賄っています。また、歳出で最も大きな金額を費やしているのは社会保障費です。これを分かりやすく一人あたりの金額に置き換えてみると、歳出面では、社会保障費で2.1万円、防衛費では3千円など、総額で毎月6.3万円かかっています。他方、歳入面では、所得税で1.2万円、消費税で1.1万円など、総額で一人当たり毎月4.1万円を支払っているので、この差は借金をして穴埋めしていることになります。歳出と歳入のバランスが崩れてきていることがお分かりになるかと思います。また、今お話しした日本の財政の状況を家計に例えると、世帯収入が30万円の家庭で、生活費に38万円を支出しているのと同じ状況です。この差額を穴埋めするための借金と、前月までの借金も返済する必要があるため、毎月17万円の借金をすることになります。その結果、家計のローン残高は5,379万円で、まった20 ファイナンス 2018 Oct.SPOT

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