ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
19/92

例えば、財務省関税局・税関では、種々の機会を利用して差止申立制度の活用を権利者に働きかけており、平成29年の知的財産侵害物品の差止状況の公表に当たっては、権利者向けの差止申立制度の紹介資料*1も併せて作成・配布した。また、税関職員の真贋識別能力の向上を図るための研修を権利者の協力を受けて実施している。さらに、意見交換等を通じて把握された権利者の要望等を踏まえた知的財産侵害物品の水際取締りに係る制度の改正及び運用改善等にも取り組んでおり、これまでに差止申立ての有効期間の延長や差止関連手続の電子化等を行っている。なお、権利者との意見交換においては、越境電子商取引の進展に伴う偽ブランド品等の個人使用目的での輸入の増加に対する強い懸念が示されており、この問題については上記4(1)で紹介したとおり、関係省庁と連携して対応していくこととしている。(3)国際的な協力の推進知的財産侵害物品の問題は、特定国にとどまらず世界各国に拡散している。財務省では、我が国の税関の制度整備や体制強化を進めることに加え、開発途上国における税関の取締能力の構築の支援についても重点的に取り組んでいる。世界税関機構(WCO)では、途上国に対して、知的財産取締りの専門家を派遣して対象国の執行体制強化を図るためのワークショップを実施しており、我が国からも当該ワークショップへ専門家を派遣する等の技術協力を行っている。また、経済連携協定(EPA)交渉においても、締約国税関当局による知的財産侵害物品の水際取締の強化について積極的に取り上げている。このような国際的な取組みの中でも、中国・韓国の税関との協力関係は特に重要である。2007年4月の関税局長・長官会議での合意を得て、日中韓知的財産作業部会が創設された。最近では2017年11月の第6回関税局長・長官会議における合意を*1) http://www.customs.go.jp/mizugiwa/content/poster_for_rightholders.pdfうけ、引き続き日中韓で効果的な取締りのための情報交換の促進に向けた取組みを行っている。5最後に知的財産の権利者の権利保護、日本の産業競争力の強化及び消費者の健康・安全の確保の観点から、知的財産侵害物品の流入を阻止するために、財務省・税関として、引き続き、国内の権利者や国外の取締機関等と連携しながら、我が国の税関の制度整備や体制強化にしっかりと取り組まなければならない。しかし、何より、模倣品・海賊版を購入しないということだけでなく、容認しないという、国民の皆さまの理解もまた不可欠である。知的財産侵害品に係る税関の取締りについて、ご理解・ご協力をお願いしたい。 ファイナンス 2018 Oct.15税関における知的財産侵害物品の水際取締りについてSPOT

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る