ファイナンス 2018年10月号 Vol.54 No.7
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は、1日平均で、84件、1,300点以上の知的財産侵害物品の輸入を差し止めていることになる。なお、輸入差止価額は、推計で約113億円に上る(注2)。【図1】は、平成14年、平成19年及び最近の5年間における知的財産侵害物品の差止実績の推移を示したものである。この図が示すように、最近5年間の差止実績は、平成14年及び平成19年の実績に比べて、1件あたりに含まれる知的財産侵害物品の数量が少なくなっているという小口化の傾向を示していると言える。(注1) 「輸入差止件数」は、税関が差し止めた知的財産侵害物品が含まれていた輸入申告又は郵便物の数。「輸入差止点数」は、税関が差し止めた知的財産侵害物品の数。例えば、1件の輸入申告又は郵便物に、20点の知的財産侵害物品が含まれていた場合は、「1件20点」として計上している。(注2)「輸入差止価額」は、正規品であった場合の推計価額である。知的財産侵害物品を小口で輸入する手段としては、主に郵便物が用いられている。【図2】は輸送形態別の差止実績の構成比を示したものである。平成29年の輸入差止件数は、郵便物が28,034件(構成比92.5%、前年比16.6%増)、一般貨物が2,287件(同7.5%、同32.3%増)であり、郵便物が大半を占めている。輸入差止点数については、郵便物が220,406点(構成比43.5%、前年比24.9%減)、一般貨物が286,344点(同56.5%、同13.0%減)であった。知的財産侵害物品の仕出国については、平成29年には中国を仕出しとするものが28,250件(構成比92.2%)で、8年連続で構成比が9割を超えており、全体の大部分を占める傾向が続いている。また、税関が輸入を差止めている知的財産侵害物品の中には、バッグ類や衣類などの他、使用又は摂取されることにより健康や安全を脅かす危険性のある医薬品、食品、自動車付属品、電気製品、美容用品などが継続して発見されており、税関として引き続き厳正な取締りを実施していく必要がある。4知的財産推進計画2018と知的財産侵害物品の水際取締りに係る税関の取組みについて(1) 知的財産推進計画2018における財務省関連の重点事項知的財産推進計画2018においては、財務省関連の重点事項として模倣品・海賊版対策が記載されている。具体的には、越境電子商取引の進展に伴う模倣品の流入増加へ対応するため、「個人使用目的を仮装して輸入される模倣品・海賊版を引き続き厳正に取り締まる」とともに、「特に増加が顕著な模倣品の個人使用目的での輸入については、権利者等の被害状況等及び諸外国における制度整備を含めた運用状況を把握しつつ、具体的な対応の方向性について検討する」旨が記載されており、関係省庁が連携し、2019年度末までに必要な取り組みを実施することとしている。(2)権利者との連携・協力我が国における知的財産侵害物品の水際取締りにおいては、権利者の果たす役割が大きいため、財務省関税局・税関では権利者との連携・協力に努めている。【図1】知的財産別輸入差止実績の推移6,97822,66128,13532,06029,27426,03430,62799.3103.962.889.669.062.350.702040608010012014005,00010,00015,00020,00025,00030,00035,000平成14年平成19年平成25年平成26年平成27年平成28年平成29年点数(万点)件数(件)件数点数【図2】輸送形態別輸入差止実績構成比の推移(左:件数ベース 右:点数ベース)05,00010,00015,00020,00025,00030,00035,000件数(件)一般貨物6.6%一般貨物7.5%6050403020100平成28年郵便物93.4%郵便物92.5%一般貨物52.8%一般貨物56.5%郵便物43.5%郵便物47.2%平成29年平成28年平成29年点数(万点)14 ファイナンス 2018 Oct.SPOT

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