ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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各地の話題医療水準の維持が難しくなる状況を受け、香川県も小豆医療圏の将来を案じ、香川県医師会、香川大学、香川県等の医療関係の専門家で検討委員会を作り、協議を重ねた結果、「公立病院を1つにして、国や県の支援を一本化し、医師や医療スタッフ、医療機器を集約することで経営基盤の安定化を図り、病児・病後児保育室や院内保育所を開設するなど、島で安心して産み育てられる子育て支援策充実にも繋がる。」との結論が出されました。4『小豆島中央病院』の設立(財政融資資金の活用)香川県地域医療再生計画に基づき、小豆医療圏域における2つの公立病院を再編することになり、平成28年4月1日に『小豆島中央病院』が開院されました。この新病院建設及び医療機器整備に際して財政融資資金の活用要望があり、四国財務局において財政融資資金の借入申し込みを受け、病院事業として約26億円の貸付を実施しています。事業団体小豆島中央病院企業団貸付対象事業病院事業事業内容新病院建設及び医療機器整備総事業費約92億円財政融資資金貸付約26億円(平成24~27年度借入額)新病院は13の診療科と234床の病床を有し、周産期、人工透析のほか、救急、結核、感染症などの医療も提供しており、“地域に寄り添う病院”として島内での医療完結に向け、救急医療の充実・高度化を図っています。病院関係者の話では、「医師不足に関しては、まだ十分ではないものの、香川県及び香川大学の全面的な支援により、統合前と比べると確保しやすい状況にある。また、企業団側も医師住宅や福利施設等を整備し、受け入れ体制を整えている。特筆すべきは、不在であった外科の常勤医が開院に合わせ確保出来たことであり、これはまさに島内での医療完結に向けた第一歩となったと考えている。」とのことでした。5おわりに病院の統合により、“島はひとつ”という意識が強まっています。建設準備段階で問題視されていた交通の便(遠距離)については、島で唯一の公共機関である路線バスの料金を大幅に値下げするなど、行政側も一緒に考えながら、患者が通院しやすいような取り組みが行われています。また、小豆医療圏域において地域住民が住み慣れた地域で尊厳を持ち、生き生きと暮らせるよう、総合的かつ一体的なサービスの提供と関係機関の連携を図ることを目的に、新病院を核とした『小豆医療圏地域包括ケア連絡会』が平成28年7月に設立されており、介護・健康・医療等に関する勉強会や予防教室を開催するなど、町を超えて連携した活動が行われています。古き時代、伊邪那岐・伊邪那美の二柱の神が生み出したる島にて、新しい病院が生み出されました。生まれ育つ…そのプロセスに財政融資資金が活用されたことに、我々は誇りを持つとともに、今後も地方創生、地域活性化に繋がる事業の実現に資することが出来るよう、地域の方々の御意見や御要望に耳を傾けていきたいと思います。※写真提供:小豆島中央病院企業団※寄稿者の役職は平成30年6月現在のものです ファイナンス 2018 Sep.83連 載 ■ 各地の話題

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