ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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《島に新しい病院が出来ました》~離島における既存病院の統合~四国財務局 理財部 融資課 上席調査官越野 康二小豆島1はじめに日本最初の書物「古事記」には、伊い邪ざ那な岐ぎ・伊い邪ざ那な美みの二柱の神が、日本の大おお八や州しまに続いて10番目に国生みしたのが「阿あ豆ず枳き辞じ摩ま」…のちにその島は「小しょうど豆島しま」と呼ばれるようになったといわれています。道の駅 小豆島オリ-ブ公園 ギリシャ風車「小豆島」は瀬戸内海国立公園の中心地・播磨灘に位置し、島の行政区分は香川県小豆郡に属し、西北部に位置する“土とのしょうちょう庄町(小豆島部分のほかに豊て島しま等を含む)”と南東部に位置する“小豆島町”の2町から成り立っており、島の人口は約2万8千人で、県内で最も高齢化率の高い地域となっています。産業面では、400年の伝統を持つ醤油製造をはじめ、佃煮製造、手延べ素麺などの食品製造業が中心で、また、地中海とよく似た気候から、日本におけるオリーブ発祥の地としてオリーブ栽培が盛んで『オリーブと言えば小豆島』と言われるようなオンリーワンの地位を確立しています。観光面では、土庄町には「世界で一番狭い海峡」としてギネス認定されている「土渕海峡」、潮の干満により沖に浮かぶ余島までの道が現れたり海に消えたりする「エンジェルロード」があり、小豆島町には映画・『二十四の瞳』の舞台となった「岬の分教場(旧小学校校舎)」、約2,000本のオリーブ畑に囲まれた白いギリシャ風車が特徴的な「道の駅・オリーブ公園」などの有名スポットがあり、年間100万人を超える観光客が島を訪れています。2離島医療小豆島には2つの公立病院がありました。その一つは土庄港付近にあった『土庄中央病院(土庄町)』で、脳神経外科、救急、その他9の診療科と116床の病床を有する病院で、もう一つは草壁港付近にあった『内うちのみ海病院(小豆島町)』で、放射線科、リハビリテーション科、その他9の診療科と196床の病床を有する病院でした。船でしか渡れない離島(フェリーで片道1時間程度)のため、緊急に島外搬送を必要とする患者については、高松港に停泊している救急艇又は香川県の防災ヘリを利用して高松市内の病院(県立中央病院など)への搬送を行っていました。3医師不足…統合に向けて平成21年以降、島内の医師の数は減少傾向にありました。これは平成16年に医師の研修制度が変わり、研修医自身で研修先を選択出来るようになったため、症例が多く様々な分野で専門医の資格が取れる“大都市の大病院”への流出が要因でした。内海病院では医師の減少に伴い、心筋梗塞等に関する常勤の専門医がいなくなり、ヘリコプターでの島外搬送の際は、同行する医師と病院に残る医師双方に負担が増えていました。82 ファイナンス 2018 Sep.連 載 ■ 各地の話題

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