ファイナンス 2018年9月号 Vol.54 No.6
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人種別の労働参加率については、ベビーブーマーの退職により、全ての人種において低下傾向が見られるものの、近年の黒人の労働参加率の上昇により白人と黒人のスプレッドが縮んできている【図表7】【図表8】。人種的マイノリティについて、パウエルFRB議長は労働市場の改善の恩恵を最も受けやすいと指摘しており*3、データからもこのことが確認できる。さらに、雇用統計を教育水準別の失業率という視点から見てみると、高校卒業未満の階層の失業率が調査開始(1992年1月)以来過去最低となっている【図表9】ことに加え、高校卒業未満の階層と大学卒業以上の階層との失業率のスプレッドが縮んできている【図*3) “These groups(筆者注:racial and ethnic minorities)tend to both suffer most from labor market downturns and benet most from improving labor markets.”(2018年6月20日ポルトガルでの講演)*4) “High demand for workers should support wage growth and labor force participation--the latter a measure on which the United States now lags most other advanced economies.”(2018年6月20日ポルトガルでの講演)表10】。足もとの労働市場の改善は人種的マイノリティや教育的弱者に恩恵を及ぼしていると考えられる。一方で、賃金については金融危機前の水準に比べると未だ低水準にある【図表11】。この点について、パウエルFRB議長は、求人数の増加が今後賃金を押し上げるとみている*4と言及している。米国において、注目度が最も高い雇用統計は、FRBの金融政策の方向性を決めるうえでも重要な統計であるため、引き続き労働市場の動向を注視していく必要がある。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。【図表4】失業率と非農業部門雇用者増減数2.04.06.08.010.012.0▲100▲80▲60▲40▲200204060070809101112131415161718(%)(万人)非農業部門雇用者増減数+24.8万人(6月)⇒+15.7万人(7月)失業率4.0%(6月)→3.9%(7月)FOMC「長期」見通し:4.5%(出所)米労働省【図表3】家計調査から得られた生産年齢人口の内訳(2018年7月分)(家計調査)(事業所調査)労働力人口1億6,225万人就業者人口1億5,597万人非農業従事者1億5,347万人雇用者1億4,445万人政府2,090万人非農業部門雇用者数1億4,913万人企業1億2,354万人自営業 888万人農業従事者 250万人失業者人口628万人非自発的失業者 302万人自発的失業者 84万人再参入者 180万人新規参入者 59万人非労働力人口9,560万人※季節調整値、万人※非労働力人口とは、職をもたず過去4週間に求職活動をしなかった者※それぞれに季節調整がかけられているため、合計が一致しない箇所がある。(出所)米労働省 ファイナンス 2018 Sep.77コラム 海外経済の潮流 114連 載 ■ 海外経済の潮流

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